第24話 ペガサスのいる泉③
彩香はペガくんに乗っている。僕は歩き。
ペガくんは僕には非常に冷たく、「ふん!」っていう声が聞こえてきそうだった。まあ、荷物だけは「しぶしぶ」背に乗せてもらえているから、少しはましなんだけど。
《峻厳の山脈》をぐるっと回って行き、《はじまりの草原》に至る。
彩香はここで、ペガくんに乗って空を飛ぼうと試みた。
――そう、残念ながらやはり、ペガくんでも乗り物酔いをしたのだった。
「ああん、もう! あたし、空飛びたーいっ!」
「なんでそんなに空飛びたいの?」
「ピンクちゃんで空飛んでる弘樹くんに言われたくない」
「まあ、空飛ぶの、楽しいけど」
「いいなあー‼」
彩香が嘆くと、ペガくんが彩香を慰めるように顔を寄せる。
ペガくん、絶対に彩香のこと、好きだよね?
僕がそう思っていると、ペガくんは僕のことを睨むように見た。――う。やっぱり。
ペガくんは彩香のことを思って(たぶん)、歩いたりほんの少し浮いたりしながら、《はじまりの草原》を進んで行った。確かに、ドラゴンよりもペガサスの方が安定感あるかも。
「わー、浮いた浮いたー! あたし、ちょっとだけ飛んだよね?」
はしゃぐ彩香。
ペガくんからは「ふふん」という声が聞こえてきた気がする。僕の方を見て、にやりって笑ったよね?
僕はすごく複雑な気分で、二人のあとをついていった。二人、というか、一人と一頭だけど。
彩香の彼氏は僕なのに! とかペガくんに嫉妬しながら、僕は《最果ての村》への帰り道を速足で歩いた(ペガサスの方が速いに決まっている)。僕はそのとき、ほんとうにもやもやしていてなんだかむしゃくしゃした気分だったんだ。
でも、そんな僕の気分なんて吹き飛んでしまうくらい、大変なことが村では起こっていた。
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