第16話 ドラゴンってお役立ち!④

 宿屋に戻って、僕は疑問に思っていたことを彩香に聞いた。


「ねえ」

「ん?」

「回復魔法かけられるなら、なんで薬草飲ませたの? そもそも、薬草なんて、要らなくない?」

「ああ、あのね、あたし、[ヒール]はそこまで使いこなせていないの。自分が疲れているとうまく使えないし」

「ああ、だから」

「それにね、魔法じゃなくても出来ること、たくさんあるんだよ。この世界も魔法ありきじゃないし、強すぎる魔法は必要ないかなって思って。弘樹くんも強いしさ」

「なるほど」


「出来損ないの白魔導士っていう方が、みんなにかわいがってもらえる気がする。薬草の知識はね、みんなに教えてあげるとみんなも使えるでしょう。魔法はそういうわけにはいかないからさ」

「あ、もしかして、彩香の謎の人脈って、薬草の知識を教えて、出来たの?」

「あーうん、そういう側面もある。それより、弘樹くん」

「な、なに?」

 彩香が、ベッドに座った僕の隣に来たので、なんとなく緊張してどもってしまう。


「今日ね、すごい魔法教えてあげるって言ったの、覚えてる?」

「う、うん」

 そう答えて、なんどなく彩香から少し遠ざかる。

 彩香は遠ざかった僕に近づいて、身体をぴったりくっつけてくる。

「あ、あやか、あのね」

 僕は焦って、また遠ざかる。でも、彩香はまたぴったりくっついてくる。


「あああ、あやか、ち、近いよ……んっ!」

 僕は彩香にキスされた。……久しぶりのキス。僕はうっとりと彩香を味わ――おうとして、我に返った。

「だめだよ、彩香。キスしたら、止まらなくなっちゃうよ」

「うん、だから、……しよ?」

「だめだめ! 赤ちゃん出来たらまずいよ!」

「だからね、あたし、習得したの! 避妊の魔法。……まあ、ちょっといろいろなんだけど」

「ええ?」

「鑑定スキルで、……排卵日が分かる……でしょ?」

「そう……なの?」

「うん、……そう……それから」

「……ん」

「……それから……ひろきくんのせい……ん……」


 ……が多いのは、まあそのあれだ。そういうことだ。

 ともかく僕は「すごい魔法」に陥落した。仕方がない。ずっと我慢していたんだ。

 しかし、ずっと避妊について勉強(?)していただなんて、僕はもう、いったい何を言っていいのか、いやはや。

 まあ、そんなわけで、僕は彩香とますます仲良くなったんだ。

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