第12話 ピンクちゃんとの飛行訓練②

 結局、ドラゴンに乗る訓練は僕だけが受けた。僕は彩香みたいにドラゴンと話すのなんて無理だから(翻訳機能をそこまで使いこなせない)、訓練士の言うことを真面目に聞いて、ピンクちゃんと空を飛んだ。


 ピンクちゃんに乗って手綱を持つ。足で合図をすると、ピンクちゃんはふわっと空へ飛び上がった。

 お。なんか、いい感じ。

 僕はピンクちゃんに合図を送り、いろいろな飛行方法を試してみた。ゆっくり飛んだり、速く飛んだり。旋回することも出来たし、上空から下に向かって急降下することも出来た。

 なんか、楽しいぞ。

 僕はけっこう長く飛行を楽しんだ。

 我ながら、うまく飛行出来ていると思う。


 ピンクちゃんとの飛行を充分楽しんだあと、地上に落ち立つと、彩香がぎゅっとしがみついてきた。

「弘樹くん、すごーい! ピンクちゃんもすごく喜んでるよ!」

「そう?」

「うん! ね、ピンクちゃん!」

 ピンクちゃんが笑ったような気がした。



 僕たちは《最果ての村》まで、地面を歩くドラゴンに乗って帰ることにした。……飛んで帰ったら早いんだけどね。彩香が乗り物酔いするから飛行は出来なかった。地面を歩くドラゴンでも酔うかと思ったけれど、そこは大丈夫で、僕はちょっとほっとした。


「あーあ、空飛べなかったなあ。……あ、ピンクちゃんが悪いんじゃないよ?」

 彩香はピンクちゃんを撫でた。

「まあ、仕方ないよ」

「うん、そうだね。……でもさ、ピンクちゃんがいるから、弘樹くんが《城塞都市ルミアナ》に行くのも便利になったね」

「え?」

「ほら、依頼をもらってきて、《最果ての村》の近くの森で依頼をこなすの」

「えーと、それって、つまり、僕だけが《城塞都市ルミアナ》に依頼をもらいに行って、彩香はいっしょに依頼はこなすけど、ギルドに行ってお金と交換してくるのは僕だけってこと?」

「うん、そう! 仕方がないよね。あたし、ドラゴンに乗って飛べないし!」

 ……確信犯?

 でもまあ、いっか。

 僕は彩香に逆らえないしね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る