2.ドラゴン、欲しいな!

第9話 ドラゴンを買う①


 僕たちは《城塞都市ルミアナ》から《最果ての村》へ戻って来た。ジョアナさんをはじめ、みんな優しく迎えてくれて、ちょっとくすぐったい気持ちになった。


 宿屋や買い物をしたお店で、僕たちはお金を支払った。

 でも、結構なお金が残っていた。

「彩香、このお金、どうしよう?」

 僕は村の外れに家を建てて、彩香と暮らせたらいいなとなんとなく思って、そう聞いた。そうしたら、彩香は言った。

「あたし、ドラゴン、欲しいな!」

「は?」

「ほら、《城塞都市ルミアナ》で、ちょっと偉そうな人たち、みんなドラゴンに乗っていたじゃない? あたしもドラゴン欲しい! それでね、空飛びたいの!」

「いや、僕、家を買ったらどうかなって思ってたんだけど……」

「いいじゃない、もうしばらくこの宿屋に泊まれば! それよりドラゴンよ!」

 ……彩香には逆らえないので、ドラゴンを買うことにした。

 ドラゴンって高い。家より高かった。しかも、場所代もかかるし。

 日本の感覚で言えば、超高級車みたいな扱い。



 冒険者登録のために《城塞都市ルミアナ》に行って、《最果ての村》は田舎だなあとしみじみと思った。

 街はぐるっと壁に取り囲まれていた。そして壁の中は人と物と活気で溢れていた。

「すごっ」

 彩香はそう言って、目をまるくして街の様子をじっくりと見ていた。

 街の中には多くのお店があったし、人家もあった。そうして中心には貴族たちと思われるひとたちの屋敷がいくつも建っていた。

 そして、ドラゴンもいたのだ。


「弘樹くん! ドラゴン、ドラゴンがいる‼」

 彩香は興奮して、僕の服をひっぱった。

「ほんとだ。ドラゴンだ……」

 ドラゴンは装具をつけて、乗り物として存在していた。空をドラゴンが人を乗せて滑空するさまは、まるで映画を観ているような気持ちになった。

「弘樹くん、あれ、いいね」

 彩香は目をきらきらさせながら言った。

 ……思えば、あのころから、ドラゴンが欲しかったのかも。

 ……あの、蜘蛛の魔物を倒して欲しがったのも、もしかしてドラゴンを手に入れるため? ――偶然だよね?

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