第8話 冒険だよっ③

 そんなわけで僕たちは《暗がりの森》にいる。


「ねえ、彩香。ここ、なんかいそうだよ?」

「うん、そうだね! 魔物の棲みかだしね」

「……えーと、ゴブリン倒せばいいんだっけ? いきなりゴブリンなんて、大変じゃない?」

「大丈夫だよ、弘樹くん、戦士だしっ」

 なんて話していたら、出てきたよ、ゴブリン。

 僕は彩香にいいところを見せようと、剣を構えた。


「弘樹くん、頑張ってー!」

 彩香が応援してくれている!

 僕は意を決してゴブリンに向かった。

 やけにゴブリンの動きが遅く感じられる。

 僕はゴブリンの後ろに回り込み、首を狙って剣を振るった!

 ゴブリンはあっけなく倒れた。

 そう言えば、最初のとき、彩香が僕の素早さと攻撃は九十九って言っていたっけ。

「弘樹くん、魔石取り出さなくちゃ!」

「あ、うん」

 僕は魔石を取り出した。

 しかし、ゴブリンの血で気持ち悪いな。

 と思っていたら、白い光に包まれて血の汚れが落ちた。

「へへ」

「ありがと、彩香」

 僕はその後もゴブリンの魔石を集めた。よかった、もうこれで大丈夫ってくらい集まって帰ろうとしたとき、森の奥から何か嫌な感じがした。


「……彩香、あれ、なんだろう?」

「いやな感じ、しない?」

「する」

 ごそり。

 森の奥から出てきたそれは、巨大な蜘蛛だった。

「気持ち悪いーーー‼ あたし、蜘蛛嫌いーーー‼ あの目、やだっ」

彩香が大声を出す。僕だって気持ち悪い。

 それは真っ黒で、脚の先や目が赤くて、学校の教室くらいの大きさの蜘蛛だった。つまり、すごく気持ち悪くて強そうだってこと。


「あ、あやか。逃げよう?」

 震える彩香の手をひっぱって逃げようとしたら、彩香が震えながら言った。

「でも、弘樹くん、あれ倒してよ。あれ、ブラックスパイダーで、お金たくさんもらえるやつ! それから、あの身体自体高く売れるから! あれ倒したら、しばらくお金に困らないし!」

 えーと、彩香?

「弘樹くん、頑張ってー! 大丈夫、強いから!」

 僕は蜘蛛を見た。

 蜘蛛もこっちを見たと思う。……気持ち悪い。

 僕は剣を振るい、とにかく頑張った。

「弘樹くん! 頑張って!」って彩香が応援してくれてたし、頑張らないとっ!

 蜘蛛が糸を飛ばしてくるのを、剣で払い、飛び掛かってきたところを、下から剣で刺した!

 こっちに来てから身体を使うことが多くて、体力がついているみたいだ。


「弘樹くん、まだ生きてるよっ」

 倒したと思ったのに?

 黒い巨大な蜘蛛は明らかに傷ついていながらも、ゆらりと立ち上がたり、赤い目を燃やして僕たちの方に向かって来た!

「弘樹くん、腹部じゃなくて頭胸部を刺して! 脳があるからっ」

 お尻じゃないほうを狙って、僕はジャンプをして飛び掛かり、上から剣を突き立てた。なんだか、こっちに来て身体能力が上がったみたいだ。

「すごい! やったあ!」

 彩香は僕に抱きついてきた。

 僕は魔石を取り出した。

「だから言ったでしょ。弘樹くん、強いって! ありがと!」

 僕は彩香をぎゅっと抱きしめたんだ。

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