第7話 冒険だよっ②

 まず最初の依頼は薬草を探すことだった。

「クコの実を集めるんだって」

「へえ」

「向こうとおんなじ名前なんだね、おもしろいね。赤い実のやつだよ」

「ふうん」

「葉っぱも採っておきたいな。お茶作りたい!」

「うん、そうしよう」

 彩香の口ぶりからクコの実が有名なものであることは分かったけれど、僕は全然分からなかった。とりあえず、彩香について《金の森》へ行く。

 彩香の言う通りに採取して、換金しに行く。

 彩香は薬草にも詳しくて、次から次へと依頼をこなし、お金を貯めていった。


 ところで気になっていたことがある。

「ねえ、彩香」

「なあに?」

「彩香さ、なんか全然汚れてなくない?」

「うん、そうだよ!」

「でも、僕たち、野宿したりしてお風呂は入れてないよね?」

「だよねえ。あたし、汚いの、駄目なの」

「いやいや、駄目とかじゃなくて」

「あたしさ、魔法書、買ったじゃない?」

「……そうだっけ?」

「そうだよー。でね、真っ先に覚えたの、[クリーン]!」

 彩香がそう唱えると、白い光が彩香を包み込み、衣服の汚れがみるみる消えていった。たぶん、肉体の汚れも消えていっているのだろう。

「ど?」

 彩香はにっこりと笑った。

 ど? じゃなくて、そんな便利な魔法あるなら、僕にも使って欲しい。

 そんな思いが顔に出たのか、彩香は僕にも[クリーン]ってやってくれた。あ、なんかさっぱりした。


 ところで彩香はいつの間にやら現地語も話せるようになっているし、魔法書を読んで魔法を獲得しているし、僕はいったい何なんだろう。落ち込むなあ。

 僕が溜め息をついていたら、彩香がじっと僕の顔を覗き込んできた。

「彩香?」

「あのね、弘樹くん。そろそろ《暗がりの森》へ行って、魔物を倒さない?」

「え? でも」

「弘樹くん、強いから大丈夫だよ、依頼探しにいこっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る