第6話 冒険だよっ①

 ギルドで冒険者登録をするために、僕たちは街に行かねばならない。

 僕たちがいる村は《最果ての村》で、小さな村だからギルドはない。《天に続く道》をまっすぐ行って、ここから一番近い大きな街、《城塞都市ルミアナ》のギルドで冒険者登録をするんだ。

 って、全部彩香が教えてくれたんだけどさ。


 僕たちはいま、ギルドに行くための服装を整えている。何しろ、水族館デートのときの服装のままこっち来ちゃったから、いろいろと準備がいるんだ。お金は後払いでいいらしい。

 って、これも彩香情報なんだけどさ。


 まず、動きやすい服装を買い、武器も買う。……そうかあ、武器も必要かあ。

 僕が異世界に来ちゃったことをしみじみ実感していると、彩香は「鏡、鏡、ほしー!」と騒いでいた。機能性も大事だけど、見た目も大事らしい。

「彩香はかわいいから、大丈夫だよ」

「違うの! スカートの丈って、すごく大事なのよっ。一センチが大事なのっ。……もういい、ショートパンツにする!」


 彩香の買い物に時間はかかったけど、僕たちは《城塞都市ルミアナ》へ向かった。街道は整備されていて、《天に続く道》は《城塞都市ルミアナ》を通って、さらに《中心の地》である王都に繋がっているんだって。

 僕たちは《暗がりの森》を左手に見ながら歩いた。

「ねえねえ、あの森って、魔物がいっぱいいるんだってね」

「う。彩香、不吉なこと、言わないでくれる?」

「弘樹くん、怖いの?」

「怖いよ、そりゃ!」

「戦士なのに? 弘樹くん、強いよー!」

 彩香は僕の腕にしがみついてきた。

 ……僕も少しは役に立つことがあるといいな。


 しかしまあ、僕よりも彩香の方がずっと役に立っているのである。

《天に続く道》をずっと行き、《金の森》を右手に見て歩き、森が終わったところに《城塞都市ルミアナ》はあった。《最果ての村》を出てから二日経っていた。

 中に入るときの交渉も彩香だし、ギルドの場所を探り出したのも彩香。もちろん、ギルドで冒険者登録をしたのも彩香だし、さっそく依頼をとってきたのも彩香。

 ……ちょっと待て。


「彩香、翻訳機能、使ってなくない?」

「あ、うん。もうなんとなく分かったから! 英語より簡単だから、弘樹くんもすぐに話せるようになるよ!」と言った。

 ……彩香はもしかして、もともとここに住んでいたのかもしれない。

 僕がそんなことを考えていたら、彩香はじっと僕を見て「弘樹くん、大好き!」と言った。……彩香がいるから、もうなんでもいいや。

 僕は口を押えて、頬が緩むのを隠した。

「じゃあね、弘樹くん、行こう! 冒険だよっ」

 僕たちは冒険に出かけた。

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