第5話 森を抜けて、村へ③


 おかみさんに案内され、二階へ行く。

「あたしはジョアナっていうんだ。よろしく」

「あたしはアヤカ! で、彼はヒロキ。こちらこそ、よろしくお願いします!」

 僕はジョアナさんと目が合い、ぺこりとお辞儀をした。

 彩香とジョアナさんは楽しそうにおしゃべりを続けた。そして、ジョアナさんは目的の部屋のドアを開けて「じゃ、この部屋を使ってね」と言うと、一階へ降りて行った。部屋はベッドが二つと机が一つ椅子が二つ、作り付けの小さな棚がある、質素な部屋だった。しかし、とても清潔に整えられていた。でも。

 同じ部屋?


 ぱたんとドアが閉じられ、彩香はベッドにぼすんと座った。

「あー、疲れたー」

 よかった、日本語だ。

「あの、あのさ」

 僕は彩香の横に座った。

「うん、なに? お腹空いたから、早くごはん食べたいね。あと三十分くらいらしいよ、ごはんまで」

「うん、お腹は空いたんだけど。あの。同じ部屋って、……その、まずいかなって」

 彩香は目を見開いて僕を見て、それから僕に抱きついてきて――そのままベッドに倒れた。


「あ、あやか!」

「うふふー。弘樹くん、かわいー」

「あ、あのね?」

「うん、でも、あたしたち、もうしちゃってるし……ね?」

「えーと、あのその」

 それはそうなんだけど、でも……もにょもにょ。

「でも、真面目な話、妊娠しちゃったら困るしね。ちょっと我慢しててよね、弘樹くん!」

 彩香はそう言って、身体を離した。

「う、うん」

 僕はたぶん、顔が真っ赤だと思う。だって。

「部屋はいっしょだけど、ベッドは二つあるから大丈夫だよ!」

 何が大丈夫なんだ? と思ったけど、言わなかった。

 ああ、まずい。心臓がばくばくする。


 宿屋の一階の食堂で、僕たちはごはんを食べた。

 シチューとパン、というシンプルなメニューだけど、お腹が空いていた僕たちにはすごくおいしく感じられた。

「おいしいねー、弘樹くん!」

 ……彩香、かわいい。そう、彩香はすっごくかわいいんだ。ちっちゃくて。

 彩香が小さいせいか、僕たちはものすごく若い二人だと思われている気がする。みんな、なんだかとても親切なのはそのせいかな? 僕たち以外にもごはんを食べに来ている人たちがいて、みんな食べ物をくれたり飲み物をくれたり、あれやこれやと、とにかくよくしてくれるんだ。

 アドバイスもいろいろしてくれたらしく(僕はそこまでスムーズに翻訳しきれていない。後から彩香が教えてくれたことだ)、僕たちはとりあえずギルドに冒険者登録に行かなくちゃいけないらしい。

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