第9話 狂気のアリア
グリムが魔剣シャルルリープを探そうとしている。
「グリム、魔剣シャルルリープの話は置いておこう! まずはグリムを修復しないと、俺の魔力が吸いとられるんだろ?」
『あ……』
折れているせいでグリムは頭が働いていないのかな……。
いっそう早く直さないと。
「いい加減シャットダウンしてよ! 直しておくからさ」
『主……了解した』
道のほうから声が聞こえてきた。
「誰か倒れてる!」
「息はあるぞ!」
「早く病院へ!」
アリアさんは死んではないようだ。
俺がやったとバレないうちに逃げよう。
「アリアさん、グリムは良い奴なんで! 俺はこれで失礼します!」
俺はアリアさんを置いて、その場を後にした。
日が暮れてきたので……目指すのは酒場だ!
魔法使いらしき人がいれば、その人に直接修復を頼んでみよう。
魔力が大事。
聖騎士はダメ。
俺は酒場の中に入ろうとした。
「ハヤト様!」
「うわぁああ!!」
俺は驚いて飛び上がった。
酒場の中から出てきたのは聖騎士の格好をした女性だ。
「驚かせてすいません。アリアです」
またアリアさんだ。
アリアさん……不死身か?
聖騎士恐るべし。
「私は聖騎士。魔剣を破壊します」
「え、はい。さっき聞きましたよ。アリアさんから。……記憶喪失でしょうか?」
「魔剣は危険です。なので見つけ次第、破壊するように言われています。それが聖騎士の使命」
ロボットみたいな人だな!
それにしてもタフだ……。
俺はグリムを壊される前に、なんとか修復しないといけない。
「もう……嫌だ……。戦うしかないけど!」
俺は折れたグリムを構えて、聖騎士に向かっていった。
「待って下さい!!」
アリアさんが剣を構えたまま静止する。
「あなたは……魔剣騎士ですか?」
「そうだけど……」
「そうですか……」
「何か問題でもあるのか?」
「いえ、何もありません。ですが……」
アリアさんが悲しげな表情を浮かべる。
「なぜ、私を攻撃するのでしょうか?」
「えっと……」
「私はただ魔剣を破壊しようとしているだけです」
いや、え? なに言ってんの!?
どうしよう……なんか変な人なんだよな。
もう怖いよ、この人……。
でも、正直に話してみるか。
「実は俺の相棒は魔剣で……それで、魔剣が治るまでに他の聖騎士に破壊されると困るというか……その……ごめんなさい」
「謝らないでください!」
「はい!」
「私が破壊するのは魔剣です!」
「それはわかっています!」
「魔剣のほうを斬ってしまえば、あなたの相棒はいなくなりますよ!」
「そうなんですけど!」
「では、なぜ?」
気は……確かか?
「俺の命を守ってくれる大切なパートナーなんですよ、魔剣は! 破壊しないでください!」
「わかりました。あなたを信じましょう」
え!? やった!
「ありがとうございます!」
「魔剣を渡して頂けますか? 破壊しますので」
「え、ええ!? ダ、ダメですよ! 何を聞いていたんですか!?」
「それなら……実力行使させていただきます」
「どうして!?」
「私は聖騎士として生きていくと決めています。魔剣は人の命を奪う道具です。私には魔剣を破壊する使命があるのです。話し合いで解決できないのであれば……力づくでいきましょう!」
彼女は剣を両手で握って構えた。
会話が成り立たないことによる疲れをこんなに味わったのは今日が初めてだ。
もう不気味なので、戦うしかないということには俺も激しく同意する。
でも、グリムがシャットダウンした状態では、俺と彼女の間には圧倒的な差があった。
「くっ……強い……」
俺は彼女の攻撃を捌ききれずにいた。
もともと俺は弱いが、魔剣グリムが折れているせいでさらに不利なのだ。
俺では相手にならない……!!
ピ、ピンチだ……。
「私の名前はアリア。魔剣を破壊する者……」
わかった!
わかったから!
アリアさんの言葉は呪いの言葉のようだ!
あ、頭が痛い!
頭痛が……!
頭痛が痛い!
頭痛が痛いぞ!!
あああああっ!!
会話できない奴と話していると、日本語さえもおかしくなるうぅっー!!
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