独りぼっちだった女の子と、幸せになるまで
如月ちょこ
あのアクセサリーのように
俺には片思いしている女子がいる。名前は陽菜。もう中学生のときから好きだからかれこれ3年になる。ただ、仲のいい友達という関係をそろそろ終わりにしたい。だから今日、俺は陽菜に告白します。
今日は、陽菜と一緒に出かける予定だ。いつものみたいに二人で映画を見て、ご飯を食べて、ショッピングモール内をブラブラする、友達と遊びに行くみたいな予定。挙動不審になってバレたら元も子もないので、慎重に。
「ごめーん!待った?」
「全然。今来たとこだよ。」
デートの定型文を行ったところで、出発する。
まずは映画。ふたりとも気になっていたバスケの映画だ。
「10番の選手が最後の最後にシュート決めて勝ったのは感動したなぁ。」
「私は11番がエースとしてめっちゃかっこよかった!」
映画の感想を言い合いながら歩いていく。今気がついたが、心なしか今日の陽菜は服にも気合が入っている気がする。
カバンには俺がプレゼントした笑顔のキャラが付いたアクセサリー。
服は、いつもとは違うちょっと大人っぽい感じのロングワンピース。
正直、すごく可愛い。そんなことを考えでいると、昼食を取るレストランに着いた。
イタリアンが売りのレストラン。俺はカルボナーラ、陽菜はジェノベーゼのパスタを頼んだ。
二人で、学校の話、部活の話、友達の話をしながら食べていると、不意に陽菜が
「ねぇねぇ、それ一口ちょーだいよ」
と言ってきた。ここで悪戯心が芽生えてしまった俺は、フォークを変えることなく陽菜に差し出す。あーんをするような感じになっているので、俺自身顔が赤くなるのを抑えるのに必死だが、もうここまで来たから引き下がれない。
「ほら、早く食べろよ?」
「……ッバカ………」
そう言うと、陽菜は観念して食べた。飲み込んだあと、陽菜が顔を真っ赤にして言ってくる。
「間接キスじゃない。それ。」
改めて指摘されると、強烈な羞恥心に襲われる。
(余計なことしなきゃよかった……)
その後は、気まずくなってしまったので、二人で黙々と食べ進めた。正直、味はあまり良く分からなかった。
昼食を食べ終わり、俺たちは二人でショッピングをすることにした。まあ、基本は陽菜が買った物の荷物持ちをしながら歩く、みたいな感じだったが。
結局陽菜は服を2着と漫画なんかを買っていた。
途中でどっちの服がいいか聞かれたが、そんなの答えられるわけがない。だって、陽菜は何着ても可愛いから。
なので、俺からのプレゼントってことで両方買ってあげた。「ありがとう」と言われたときの笑顔。うん、この笑顔を好きになったんだよな、俺。
そうこうしているうちに、もう帰る時間に。
いつもなら、このまま家に向かって行くのだが、今日は、行きたいところがあった。
「陽菜、ちょっとついてきて欲しい。」
そう言い、向かった先は少し離れた駅。ここでイルミネーションが行われていることを知ったので、陽菜と見に来たいと思っていたのだ。
「わぁ、きれい…」
「そうだろ?陽菜と一緒に見たいと思ってたんだ。」
「ありがとう!ほんとにすごいよ…」
しばらく、二人でイルミネーションを見る。
けど、俺にはまだやることが残っているんだ。
覚悟を決めろ。今日言わなかったらいつ言うんだ。俺と陽菜が始めて喋った日。11月17日。
その日からもう4年も経ってるんだぞ。
いつまでも友達っていう言葉に甘えてていいのか?恋人になりたいんじゃないのか?
もうすぐイルミネーションが終わる。言うなら、今しかないよな。よし、
「「あの」」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。先に口を開いたのは陽菜だった。
「翔太?言いたいことあるなら言っていいよ?
ていうか、私は翔太から言って欲しい。」
どうやら、もう言いたいことはバレてるらしい。
ここまで来たら、当たって砕けろ。
「陽菜。俺は、陽菜のことが好きです。付き合ってください。」
今度は長い長い沈黙。けど、俺からは口を開かない。陽菜の返事を待っているから。
どのくらい経っただろうか。陽菜がようやく言った。
「………遅いよ。バカ…」
そう言った陽菜の目は涙目で、俺は思わず陽菜を抱きしめる。
俺の胸の中で、陽菜がぽつりぽつりと話し始めた。
「私ね、ずーっと翔太のことが好きだったの。
いつからだろうな、一人だった私に話しかけて仲良くしてくれてからかな。
けど、翔太の周りにはいっつもいっぱい友達がいたし、私なんかが翔太と付き合えるわけないって、自分の気持ちを押し殺してたの。
そう思ってたけど、高校生になっても翔太は私とずっと一緒にいてくれるし、中学のときよりも話すようになって、もしかしたらって思って、告白してくれるのを待つことにしたの。
多分無理だろうなって思ってたけど、今日告白してくれてほんとに嬉しかったよ。けどね、」
そう言って、陽菜は目に溜まった涙を拭い、
「遅すぎるんだよ、バーカ。」
その言葉を発すると同時に、俺と陽菜の唇が重なった。
「遅すぎた分の埋め合わせは、この先一生かけてしてもらうからね。」
「おう。任せとけ。」
無事に恋人同士になった二人は、手を繋ぎ、歩き出す。
「そういえば、陽菜はなんて言おうとしてたんだ?さっき」
「私もね、翔太と一緒。今日は翔太が私に初めて話しかけてきてくれた日でしょ?だから、告白するなら今日しかないかなって思って。」
「そうか。これからもよろしくな。」
すると、満面の笑みで、
「こちらこそ、よろしくね?」
その笑顔を見て、俺は決意する。
この先、一生この笑顔を守っていこうと。
そして、自分も陽菜の横で一緒に笑っていこうと。
陽菜がカバンにつけている、あのアクセサリーのように。
______________________
「じゃあ、行ってきまーす」
あれから5年経ち、俺は教師になった。今年から、担任を持つことになり、今日はその初日。
中学生のときの陽菜のような子を、学校が楽しいと思えるようにするのが、今の俺の夢だ。
そして、この先も陽菜と一緒に幸せに暮らしていく、これが俺の2つ目の夢だ。
「どうしたの?早く行きなよ?」
陽菜に言われて、我に返る。
「大好きだよ、陽菜」
「急にどうしたのよ。……私も大好きよ、翔太」
そんな夫婦がこの先もずっと幸せに暮らしていくことを、神様以外はまだ知らない。
独りぼっちだった女の子と、幸せになるまで 如月ちょこ @tyoko_san_dayo0131
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