第32話 一難去ってまた一難

第32話


見知らぬ女の人達二人に連れられていった俺達。


抵抗する間もなく連れてこられのは………


「「こ、此処は?」」

「私達の診療所よ。」

「私達、こう見えてもお医者さんなのよ?」

「「へぇ………」」


初めて見たわ、お医者さん………


基本的に薬草とか、時々来る業者から薬買つってたからな………


────あの時、この人達と出会ってたら、母さんの病気は治せたのかな?


────無意味な仮定だな、うん。


『………アーク。』


何だ、魔王?


『一応、一応じゃ。少し、警戒しておけ。』


────成る程ね、了解。


「じゃあ、二人とも怪我を見せてね。」

「欠損と心の病気以外は何でも治しちゃうからね♪」


☆☆☆☆☆


────そして、現在へと至る。


「本当に治してくれたな、あの人達………」

「ですね。言ってた通り、私の片手はもう治せませんでしたけど………」


くそっ、何とも言えない。


原因は忘れたけど、何であの時の俺は起こされるまで寝てたんだ?


「まぁ、結果的にラッキーでした。」

「えっ、何が?」


片手を無くした事の何処がラッキーなんだ?


コイツ、頭可怪しくなったのか?


「ふふっ、まだ内緒です。そ・れ・よ・り

も!!話してくれますよね、木こりさん♪」


はぁ、ですよね………


しかし、どう説明したものか………


『なら、我が直接話そう。』


はぁ、どうやって?


『少しだけパスを繋ぐ。話す事限定の回線をじゃがな。』


そのパス、回線とやらはどう繋ぐんだ?


『奴の頭に手を置け。』


それだけで良いのか?


なら────


「えっ、急に何ですか、木こりさん!?」


俺は農家だ。


「な、撫でてくれるのなら、是非ナデナデしてくざさい………」

『そんな事をする為に乗せた訳じゃないぞ、色ボケ娘。』

「きゃっ!?」


魔王の声が聞こえた瞬間、プリズムは飛び跳ねる位に驚いた。


おお、期待通りの反応。


まぁ、そうなるよなぁ………


「い、今の声は何!?一体、誰が!?ま、まさか、幽霊!!??」

「強ち間違いじゃねぇかもな………」

『煩い。我をそんな低俗な奴等と一緒にするな。………話が逸れたな。』


幽霊って、お前から見たら低俗な存在なんだな………


まぁ、魔王なんだから、大概の奴等は低俗に見えてそうだけども………


「や、やっぱり、聞こえて………」

『ああ、そういう風に仕向けたからのう。手短に話すぞ、プリズム・ティラン。』

「えっ………」

『我はイリス・インディゴ。最初にして最後の魔王じゃ。』


おいおい、初っ端からぶっちゃけやがったぞ、コイツ………


☆☆☆☆☆


斯々然々、魔王は淡々と現状をプリズムに述べていった。


そして、全てを語り終わった時、彼女は少し青ざめた顔で、俺に………


「じゃあ、木こりさんはコレからもずっと、あんな痴女みたいな天使族から狙われ続けるって事ですか!?」

『じゃろうな。まぁ、雑兵な天使族くらいなら大丈夫じゃろう。』


そうか?本当に大丈夫か?


そりゃ、ちゃんと逃げ切るつもりではあるが、グラシャラボラスにあんなにボロボロにされた後だぞ、俺………


『ちゃんと憤怒の炎は使えたじゃろ?なら、傲慢以外の権能も使える身体にはなった筈じゃ。それなら、余程の強者が来ない限り、お主は負けんよ。』


成る程ねぇ………


まぁ、その強者が出て来た時はどうするのかって話なんだが………


『その時は我が何とかするわ。少なくとも、今の我でも愚妹以外には負けんよ。』


頼もしいこって………


「────やっぱり、決めた。」

「ん?何をだ、プリズム?」

「私、木こりさんに────」


彼女の言葉は、其処から先を紡ぐ事は無かった。


喋ろうとした瞬間────


「見つけた、僕の花婿なアーク様!!」


壁をぶち破り、何者かが入り込んできた。


破壊された壁の破片と共に、緋色の羽の様な物が舞い落ちていく。


ああ、幻想的だ………


こんな状況じゃなきゃ、魅入っちまう所だったな………


「誰だ、お前?」

「僕はフェネクス。君を救いに来た、君の花嫁さ!!」


成る程、つまりお前は………


「じゃあ、敵だな?」

「いやぁ、君の愛すべき存在だよ♪」


続く

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