第21話 次の敵と新たな出会い

第21話


アリスside


「はぁ、疲れました………」


私は馬車に揺られながらそう嘆く。


「うぅ、アーク………」


ちっ、煩い寝言ですわね………


そう呟きたいのは私の方ですよ、全く。


私だってアーク様を探したいのに、ギャンギャン泣き続けやがりまして………


それを勇者の奴に隠し通すの、どれだけ苦労したと思ってらっしゃるのですか?


賢者の奴はさっさと自分だけ先に転移魔法で帰りやがりましたし………


「何で私の仲間はこんなのばかりなのでしょうか?」


仮初めの物とはいえ、好き勝手に動く人達が多過ぎやしませんか?


私だって一応転移魔法を使えますのに、この子から離れる訳にもいきませんし………


「はぁ、本当に面倒………」

『何がです、ミリス様?』


あら、定期報告ですわね………


確か、この声は………


『私ちゃんです、グラシャラボラスちゃんです。』

「ああ、貴方ですね。」


趣味の悪い貴方ですか………でも、丁度良いですね。


「グラシャラボラス、これから貴方に新たな命令を下します。」

『何です?私ちゃん、逆ハーで忙しちゃんですよ?』

「ハーゲンティが死にました。」

『────マジちゃんです?』

「マジちゃんですよ。そして、アーク様が逃げました。」

『マジちゃん二度目!?ていうか、大丈夫ちゃんなんです!!??』

「大丈夫ちゃんじゃないです、近くに居るなら探してください。そして、連れてきてください。」

『了解ちゃんです、バイバイちゃんアリス様♪』


ふぅ、相変わらずちゃんですね、グラシャラボラスちゃんは………


────あれ、私にも口癖が移っちゃいましたわね。


「そもそも、あの子に頼んで大丈夫だったのかしら………」


下手したら………


「まぁ、生きてさえいれば、多少は許してあげましょうか。」


☆☆☆☆☆


「はっ、ミリス………って、アレ?」


何処だ、此処!?


────ああ、此処は昨日野宿した所か。


「うっ、身体のあちこちが痛い………」

『そりゃ、こんな所で寝りゃあのう。それにお前さんが………』

「ん、俺がどうしたんだ?」

『………いや、良い。』


何だ、変な魔王だな………


「さて、これからどうするかな………」

『金を稼ぐ方法とかないのか?』

「有るには有るぞ、盗賊るとかな。」

『それは酷い最終プランとかじゃろ………』

「まぁな。他にも冒険者になる手も有るが、色々とな………」

『色々?』


いや、だってさ………


「成るのは簡単だし、身分証明書も作れるのは良いけどさ、今の俺達が一つの場所に留まって依頼を受けれると思うか?」

『それは確かにのう………』


だろ?


そもそも、相手がどれだけ居るのかも理解わからんし、冒険者は長い間依頼を受けてないと首になるらしいし………


問題は山積みだな、本当………


「どうした物かなぁ………」

『まぁ、一度町に入ってみてから、考えてみるのはどうじゃ?身分証明書目当てで冒険者になってみるの有りじゃろうしのう。』

「それもそうか………」


さてはて、町はどんな感じだろうね………


別の町には何回か行った事はあるが、此処の町は初めてなんだよなぁ………


『そうなのか?』

「ああ。俺が行った事がある町は、正反対の方向にある町でな。貧相な町で、『もう村って言った方が良いんじゃね?』って思った覚えがあるよ………」


懐かしいな、本当………


あの宿屋の娘、元気にしてるかねぇ………


『お前さん、まさか………』

「何が『まさか………』なんだ?」

『いや、別に良い………』


さっきから何が言いたいんだ、コイツ………


「あっ、木こりさん!」


何か叫んでる女の子が居るな………


「木こりさん!木こりさぁん!!」


ほら、読んでるぞ木こりさん。


「木こりさん!!木こりさぁんってば!!!」


全く、早く彼女の元へ行ってやれよ木こりさんとやら………


『これ、お主じゃないのか?』

「知りませんね、魔王様。私は農家です。木こりなどやった事がありません。」

『お主、農家じゃったのか?』

「ええ、俺の一族は全員農家ですよ。」


だから、木こりさんなんて知りません。


絶対に知りません。


────ええ、本当に。


「木こりさん、返事をしてください!!」

「人違いです、放してください。」

『やっぱり、お主じゃん………』


何を言ってるんですか、魔王様?


さっきから、人違いと言ってるじゃないですか、もう………


もしかして、老人ボケですか?


『ぶっ飛ばすぞ、お主。』

「人違いじゃないですよ、木こりさん!私です、私ですよ!貴方の許嫁のプリズム・ティランです!!」


だから、人違いです。


続く

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