第22話 木こりじゃない、農家です

第22話


あの場で話すのが面倒だった訳ではない。


変な風評被害が広がるのを防ぎたかった。


特に『許嫁』という部分と、更に『俺が木こり』という部分を。


なので、場所を無理を言って変えて貰った。


「此処なら一杯話せますね♪」


連れられた場所が宿屋のフロントだが、もう面倒だから黙っておこう………


「ええ、そうですね………」

『お主、何があったんじゃ本当………』


それはな………


☆☆☆☆☆


(回想中)


まだクソ親父が生きていた頃………


『おい、息子よ。』

『何だ、クソ親父。俺はこれからミリスの所に行こうとしてるんだが………』


というか、こうやって俺を呼び止める時のクソ親父は、大概嫌な要件しか持ってこないんだよなぁ………


『実はな、お前に許嫁が居るのだ。』

『そうか、死ね。』


☆☆☆☆☆


こんな感じだったな………


『えぇ、もうちょっと内容が欲しいわ。それじゃ、お前さんの親父が殺害予告されただけの回想じゃぞ?』


えぇ、面倒だな………


仕方ない、か………


☆☆☆☆☆


(回想中)


『この子がお前の許嫁だ、アーク。』

『おい、前に断ったよなソレ。ていうか、何で連れてきてるんだよ!?俺にはミリスが居るって言ったよな!?』


何考えてるんだ、このクソ親父!?


『初めまして、木こりさん。私、プリズム・ティランです♪』

『君も君で凄いな………俺真正面から断ったぞ?』


いや、それ自体はどうでも良いんだ。


そもそも、俺は………


『俺は木こりさんじゃない。強いて言うなら農家さんだ。』

『そこなのか、息子よ………』


当たり前だろ、死ねクソ親父。


『えっ、でもよく私の町に木材を運んでるのを見てましたよ?』

『働き手が少ないから手伝ってただけだ。』

『でも、ほぼ毎週見てた時期もあった気がするんですけど………』

『たまたまだ。』

『でも………』

『たまたま、たまたまだ………』

『………はい、木こりさん。』

『だから、農家だ。』


☆☆☆☆☆


『お主、農家じゃなくない?』


気になる所はそこか?


ほら、俺の親父がどれだけクソ親父っぷりなのかとかさ………


『いや、それは別にどうでも………』


何!?


クソ親父だぞ!クソ親父なんだぞ!!


仕方ない、これから…………


☆☆☆『天丼やめーい!!』


なっ、酷い事をするな!


流石魔王なだけあるよ、全く!!


『言い掛かりにも程があるのう………』


はぁ、俺には正当性がちゃんとあるからな?


「木こりさん!!」

「うおっ、ビックリした!?後、俺は農家だからな!!」

「そこは忘れないんですね………」

『そこは忘れないんじゃな………』


煩いやい、俺は農家だぞ!!


「って、そういうのはもう良いんです木こりさん!!何か別の女と話してる気がしてムカつきますし、さっきから何なんですか!!」

「いや、そんな事言われてもな………ていうか、俺は農家だ。」


というか、魔王に気が付いたのか?


女の勘、怖っ………


そう言えば、ミリスの奴もそういうのは得意だったし、怖かったな………


「また考えてる!!しかも、今度は過去の女の事でしょう!!」


またか!?


────過去の女?


────ミリスが過去の女?


はぁ………


憤怒のレイジ『止めろ、アーク!!』


ま、魔王────


あ、れ、意識、が──────


『全く、馬鹿者め………』

「あれ?木こりさん!?大丈夫ですか、木こりさん!!??アークさん!!!???」


続く

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