第14話 契約完了
第14話
黒い羽、魔物と人間が混じった様な姿………
そんな容姿をしている奴等を、俺はたった一つしか知らない。
「な、何で、魔族が………」
訳が
周りが金になったと思ったら、変な声が聞こえ始めた。
しかも、挙句の果てには魔族に抱きかかえられている始末だ。
混乱し過ぎてどうにかなりそうだよ、チクショウが!!
「おや、何故怯えて………ああ、この姿のまま貴方を迎えに来てしまいましたね。コレは失敗しました………」
何をブツブツ言っているが、今がチャンスだ!!
「喰らえ、魔族!!」
「なっ、何をするんです!?」
足で魔族を蹴飛ばし、地面に降りる。
少し高いがちゃんと着地する事は出来るだろう。
「危ないですよ、アーク様!!」
「はぁ!?何で、俺の名前を───ぶっ!!??」
『俺の名前を知っているのか?』と俺は尋ねようとした。
だが、出来なかった。
俺が地面に降り立とうとした瞬間、そこは地面ではなく水になっていた。
しかも、俺達の周りだけが囲われるかの様に水浸しになっていたのだ。
「くそっ、溺れるかと思ったわ!!」
しかも、少し口に入ったせいで、気が付いたのだが………
「これ酒じゃねぇか!!」
何で酒なんだよ!?
しかも、これワインじゃん!!
お偉いさんがよく飲んでるらしいワインって奴じゃん!!
昔、偶然飲ませて貰わなかったら気が付いて無かったぞ!!!
「ええ、私はハーゲンティ。周囲に存在する水を操り、擬似的な浅瀬の池を創りました。ワインに変換したのはちょっとした茶目っ気です。」
茶目っ気で済む奴か、コレ!?
「しかし、酷い事をする人です。私は貴方を迎えに来たのですよ?」
「はぁ!?」
「その様子を見ると、また抵抗されそうですね………なら、こうさせて貰います!」
そう告げた瞬間、彼女の手が金色に輝いた様に見えた。
そして────
「か、身体が────!?」
一瞬の内に動かなくなった。
最初は金縛りという念動力の類かと思ったのだが、直ぐに違うと
「なっ、身体が金になってる!!??」
このままじゃ、俺は────
「はい、金の像になりますね。本来は金属や鉱物しか金に換えられませんが、私の水やワインを浴びた人は特別です。このまま金の像にしてから、貴方を運ばせて貰います。」
ちくしょう、何で、何で何で!!!???
『ケイヤクシロ。』
「またか!?一体、誰なんだよ!!」
「はい、何の事です?」
謎の声がまた聞こえてきた。
この反応によると、ハーゲンティと名乗る魔族には聞こえてないみたいだが………
『ケイヤクシロ、タスケテヤル。』
「────助かるのか?」
「アーク様、何を言ってるのでしょうか?もしかして、変になられました?」
正直、滅茶苦茶胡散臭い。
でも、先程まで俺に警告してくれていた声でもある。
『モチロン。』
「────俺はお前に乗るしかないのか?」
『モチロン。』
「幻聴が聞こえてらっしゃるのですね。早めに金の像にして、あの人の元へ送って差し上げなければ………」
煩い、魔族だな………
────はぁ、仕方がないか。
他に選択肢も無いのだ。
金の像にされる位なら、この変な声の奴に乗ってやるよ!!
「契約してやる!!だから、助けろ!!」
『心得た、契約に基づき、我がお前を助けるぞアーク!!』
今までとは違い、はっきりとした言葉が返ってきた。
しかも、この声は何処かで………
『はっ、こんな金メッキごときで、我らの自由を阻めると思うなよ!!』
えっ、俺こんな事言ってない………
『ああ、ほんの少しだけ我がお前の身体を借りてるからな………』
そうかそうか………はぁ!?
「────貴様、何者だ!?アーク様に何をした!!??もしアーク様に変な事をしたのなら容赦しないぞ!!!」
あれ、何か心配してくれてるぞ、この魔族の人………
『絆されるんじゃないぞ、アーク。それに先程までお前に変な事をしてた奴に言われる筋合いじゃないしのう。』
確かに………
「くっ………」
『ほら、言い返せまい。まぁ、可哀想だから貴様の「我が何者か?」という問いには答えてやろうぞ。
あっ、それは俺も聞きたい。
『我はイリス、イリス・インディゴ。初代にして、最後の魔王じゃ!!』
──────────────────は!?
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます