第12話 悪魔の囁きがcalling
第12話
「うぅ………」
真っ暗な視界が開けると、見慣れた天井が上に在った。
俺、あの傷で生きてたのか………?
「こういう場合は『知らない天井だ………』って言うらしいですよ、アーク様?」
「み、巫女様………?」
「はい、貴方の巫女様です。」
声のする方を向くと、濡れた布と水の入ったお盆を持った巫女様が居た。
────何で、この人がこんな事を?
「私がアーク様の介抱をする為ですよ。あんな事を仕出かした勇者様は論外ですし、ミリスさんは怪我を治す以外は無理でしょう。ルインさんは貴方に無関心な上に状況を悪化させそうですから………」
行動の意味は
「本当にすみませんね、アーク様。貴方を斬り付けた勇者様はちょっとお仕置きしておきましたから、安心してください。」
「────お仕置き?」
「はい、これでも勇者様に稽古を付けてあげた事もありますから。主にステゴロと棍術にですけど、結構強いんですよ?」
────それは巫女じゃなくて、僧侶とかの戦いじゃないのか?
────いや、違うだろ。
今はこんな下らない事よりも………
「ミリスさんの事、聞きたいんでしょう?」
「巫女様………」
「アリスで良いですよ。むしろ、そっちの方が推奨です。」
「巫女「アリス。」アリスさん………」
「さんも要らないと言いたい所ですが、まぁ及第点という事にしておきましょう。」
何でこんなどうでも良い事に拘るんだ、この人!?
「────まぁ、良いでしょう。これは後でどうにでもなる事です。」
「何がですか?」
「今は気にしなくても結構ですよ。」
「そうですか、なら────」
ミリスの事を話してくれと頼むつもりだった。
だが、言えなかった。
その言葉を口に出そうとした瞬間、アリスさんが土下座していた。
────は!!!???
「な、何してるんですか、アリスさん!!??」
「本当に申し訳ありませんでした!私が着いていながら、あの様な結果にさせてしまうなんて!!」
だから、何でアリスさんがそれを………
「早く気が付くべきだったんです!私は無事にアーク様の元へミリスさんを送り届けると約束したのに、守る事が出来なかった!!こんな体たらくで、何が女神様の巫女か!!!」
「アリスさん………」
貴方は別に悪くないだろうに………
────ナニカオカシイ。
「だからって、土下座なんてしなくても良いでしょうに………」
「いえ、させてください。これは私なりの誠意なのです。いや、これだけでも足りない位です!!」
これ以上?
────ナニカオカシイ。
「私を好きにしてください!ミリスさんの代わりにとして、扱うんです。貴方への贖罪なら何でもしますから!!」
な、何でも!?
そ、それは何というか、その………
────キガツケ、ナニカオカシイ。
「私の身心の全てを、貴方に捧げます。さぁ、今直ぐにどうぞ!!」
と、彼女は俺の前に全てを曝け出すかの様に立ち上がる。
そして、少しずつ服を脱いでいき………
────ナニカオカシイ!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」
「きゃっ!?」
思わずアリスさんを突き飛ばし、家を飛び出す。
唯ひたすらに宛も無く走っていく。
駄目だ、あの場に居たら、何かが可笑しくなってしまう!
致命的に何かを間違えてしまう!!
「それだけは、それだけは………」
それだけは絶対に嫌だ!!!
☆☆☆☆☆
アリスside
「あ〜あ、やらかしてしまいました。」
もう少し丁寧に詰めていけば良かったですわね………
それにしても、流石はアーク様ですわ♡
「私のこの魅了の聖眼の力をレジストするなんて………惚れ直しましたわ♡」
でも、既に誰もが後戻りは出来ない所に来ている。
私が此処までそう来させた。
「さぁ、今宵で大詰め。チェックメイト、王手を堪能するとしましょうか!」
続く
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