第11話 何を言っているのか理解らない

第11話


何を───言って─────


「突然でごめんね、アーク。でも、もう私はそう決めたの。」


────決めた?


「────最初はね、早く終わらせてアークの元に帰ろうと思ってたの。」な


────それは知ってる。


────少なくとも、旅立とうとしてた時のお前はそういう感じだった。


「でもね、勇者様と出会って、少しずつ私の中の気持ちが変わっていったの。」


────変わった?


「本当に大変な旅だった。四六時中油断は出来ないし、魔王が従える魔物や魔族は怖い奴等ばっかりだった………」


────それは、本当にそうなのだろう。


俺も何回か魔物は見た事があるが、あれは人知を超えた怪物だ。


彼女はずっとそれと戦っていた。


故に恐怖を覚えるのは仕方のない事だとは思う。


だが────


「そんな私を仲間は、特に勇者様は助けてくれたの。」


────それは当たり前の事では?


仲間が仲間を助ける事なんて当然の行為だろう。


それが出来ない奴は、そもそも徒党を組むべきではない筈だ。


「最初は程よくイケメンなのが鼻に付くといつか、無性に腹が立つ感じだったの………」


────何故だろう?


ミリスが俺と同じ感想を抱いていた事がちょびっとだけ嬉しい。


今はそんな物を感じてる余裕など無いというのに………


「でも、彼に助けて貰う度に、どんどん私の中で彼の存在が大きくなっていったの。少しずつ、少しずつ大きくなっていって、それでアークよりもずっと、ずっと大きくなっちゃったの!!」


────────────────それで?


「だから、私と別れてアーク!!私はもう勇者様じゃないと駄目なの!!私はもう勇者様の物なの!!」


そうか、そうかそうか────


「ミリス────」


────それで納得できると思ってるのか?


「…………(ニヤッ)」


ミリスに何かを言おうとした瞬間、勇者の顔が目に入った。


俺の瞳に映し出されたその顔は、明らかに俺を嘲る様な顔だった。


『お前の物はもう俺の物だ。』と、俺は言っている様に思えた。


ああ、それは駄目だ………


その嘲笑にどんな意味が有るかは、理解わからない。


だが、そんな事をされちまったら………


「勇「いけません、アーク様!!」────」


俺が動こうとした瞬間、巫女様が焦った様に俺を止めてきた。


一瞬、それに気を取られた瞬間………


────俺は天井を見上げていた。


気が付いた瞬間、俺は倒れていた。


そして、正面の辺に鋭い痛みを感じる。


ああ、成る程………


「斬、られ、た、のか────」


こうなる未来が理解わかってたから、巫女様は止めよとしたんだな………


「アーク!?」

「何をしてるんですか、勇者様!?」

「えっ、あっ、すまん。つい、殺気を感じたから………」

「私はノーコメントで。」


痛みと共に薄れゆく意識が、勇者達の声を捉える。


はは、何でこんな事になったんだろうか?


多分、死ぬかもしれない。


死なないにしても、ミリスの顔をちゃんと拝められるのは、今回が最後かもしれない。


だから、だからこそ────


────俺の意識が果てる前に、ミリスの顔を見せてくれ。


「ミリス────?」


意識が消える寸前の俺に写ったミリスの顔は酷い物だった。


泣いていた、苦しそうだった、後悔が滲み出ていた。


それ以上に、彼女の顔は………


「ごめんね、アーク………」


俺に謝るミリスの顔は………


────どうしようもなく、何かに助けを求めている顔だった。


続く

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