第10話 ワカラナイ

第10話


この後、俺達はずっと抱き合っていた。


そのせいで、勇者様達を放置してしまった。


そのせいで………


「アーク様!?ミリスさん!?いい加減に離れてください!!」


と、巫女様に無理矢理に離されてしまった。


残念、もう少しミリスの柔らかさを堪能したかったのに………


特にむ────


「アーク様?」


おや?


何か巫女様の視線が怖いぞ?


そう言えば、巫女様のは………


「ごめんなさい。」

「何を謝ってるんですか、アーク様?」

「ひっ、そ、そんな事よりも、どういったご要件でこのハシノ村に?」


こ、怖いですよ、巫女様!?


こういう時はこうやって話を逸らすに限る。


「話を逸しましたね………まぁ、良いでしょう。ふふ、少しだけ伝えたい事と、ミリスさんの希望で、この村に1日だけ寄りに来たのです。」


そうだったのか………


何て幸運なんだ、俺は………


母さんが死んだせいで少し参ってたからな、俺も………


「では、アーク様のお家に案内してくださりませんか?」

「えっ、良いですけど、巫女様達を迎い入れれる様な家じゃありませんよ?」


というか、高貴な人を入れたら、罰が当たりそうな家なんですけど!?


「大丈夫ですよ、アーク様。」

「そうですか?なら、まぁ………」


仕方ないって奴なのか?


☆☆☆☆☆


巫女様に押し切られ、勇者様達を俺の家へと案内する。


中に入った瞬間、ミリスの奴が不安そうに俺へと………


「ねぇ、お義母かあさんは?」

「────死んじまったよ。少し前に、流行り病でな。」

「そ、そうなのね………」


と、話を聞いたミリスは落ち込んでしまう。


やらかした、こんな空気にしちまうつもりは無かったのに………


「まぁ、そうだったのですね!では、お話が終わったら、お墓に連れて行ってくれますか、アーク様。」

「へ?べ、別に良いが、何でですか?」

「勿論、アーク様のご家族にお祈りを捧げる為です!」

「そ、そうですか………ありがとうございます、巫女様。」


な、何て良い人なんだ、この人!?


何か会うたびに尊敬度が増していくな、この人………


「おっと、それよりも今は私達の自己紹介が先ですね。」


と、彼女は俺を真っ直ぐ見据える。


そして、嬉しそうに………


「私は巫女、アリス・スカーレットです♪」


スカーレット、確か女神様がこの地に降り立った時の姿の色だったか?


ていうか、今初めてこの人の名前を聞いたな、俺………


ミリス含めて、結構お世話になってるっていうのにな………


「私は賢者、ルイン・ハーベスト。別に覚えなくても構わないけどね。」


この人は賢者様なのか………


よくよく見たら、かなり前の新聞の写真にミリスと巫女様と一緒に写ってた女の子だ。


でも、写真と雰囲気が違う様な………


「俺は勇者、前田 一輝だ。コッチ風に言うなら、イッキ・マエダだな。」


歴代異世界勇者様も変な名前だとは聞いていたが、コイツも変な名前なんだな………


しかし、程よくイケメンなのがめっちゃムカつくな………


凄いモヤモヤするわ………


「聖女、ミリス。まぁ、アークは知ってると思うけど。」


当たり前だろ。


ミリスの自己紹介は必要無かったんじゃねぇかな………


「はい、これで皆アーク様に自己紹介できましたね。では、ミリスさん。アーク様にお話があるんでしょう?」

「────うん。ねぇ、アーク………」


ミリスは真剣な目をしていた。


それでいて、哀しそうな目もしていた。


ああ、何か嫌な予感がする………


ちょびっとだけ覚悟を────


「────私と別れて欲しいの。」


決めた──方が───って─────


「────────────────は?」


続く

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