第9話 再開の時

第9話


「寂しいなぁ………」


一人になった家で、俺は呟いた。


1日にこの言葉を何回呟き続けただろうか?


「参ったな、こりゃ………」


死なない限り、何年でもミリスの事は待つつもりだ。


それでも、一人というのはやっぱり辛い。


母さんが死んだ今、俺にはもうミリスの奴しか残ってないからな………


「しかし、本当に凄いよなミリスは………」


最近1月前届いた新聞には、ミリス達が魔王の四天王の一人を倒したという記事が載っていた。


ちゃんと生き残ってくれた事も嬉しいし、頑張って活躍してる事も我が事の様に嬉しい気分になる。


しかも、どうやらこの村付近にまで来てるらしい。


「ほんの少しだけ寄ってほしい………は我儘になるのかね?」


まぁ、望みは薄いだろう。


「はぁ、寂しいなぁ………」


☆☆☆☆☆


『アーク、アーク!』


誰だ、お前は?


『そうか、まだ我の姿は見えんか………』


だから、一体お前は誰なんだよ!?


『良いから聞け、アーク………』


無視するな!俺の質問に答えやがれ!!


『奴の使徒が来る!緋色の怪物がお前の前に立ちはだかるだろう。』


お前はさっきから何を言ってるんだ!?


奴の使徒!?緋色の怪物!!??


『その時は我の名を叫べ!!』


お前の名?


『我の名は──────────────』


☆☆☆☆☆


「はっ!?」


変な夢を見た。


最近はやたら変な不審者に名前を教えられる悪夢を見る。


原因が理解わからない上に、今まで奴の名を聞き取れた事は一度もない。


「はぁ、顔を洗って目を覚ますか………」


立ち上がって近くの井戸に行こうとした瞬間、村の入口の方から………


「お〜い、皆!!前みたいに騎士様達が来たぞ!!それに勇者様達も!!」


────えっ、騎士様達?


────それに、勇者様達もだって?


という事は、つまり、きっと………


「────ッ!!」


急いで入口を目指す。


全力で走り抜け、彼女が居るであろう場所へ俺は────


「着いたぁッ!!」

「なっ、何者だ貴様!?」


大勢の奴等が集まってる場所で止まると、騎士様達が何故か武器を向けてきた。


邪魔するなよ、用はお前等に無いんだよ。


「止めろ、お前ら。」

「しかし、此奴は普通に怪しいですよ!!」

「こいつに剣を向けると酷い目に合うぞ。前の私がそうだった様にな。」


騎士様達を止めた奴を見ると、何処か見覚えがあった。


────ああ、あの時の可哀想な騎士団長様だ。


という事は………


「お久しぶりですね、アーク様。」

「巫女様!じゃあ、やっぱり!!」

「ええ、貴方の会いたいお方は居ますよ。ほら、あちらへ。」


巫女様が示す方へ向くと、其処には綺麗な女性が立っていた。


この世の者とは思えない程の絶世の美人であり、目が灼かれそうな位に美しいドレスを身に纏っているが………


────ああ、間違いない。


彼女は、彼女は─────!!


「ただいま、アーク!!」

「お帰り、ミリス!!」


思わず、俺達はお互いに抱き着いた。


お互いの実在を、再会したという実感を確かめ合う為に………


────だから、なのだろうか?


この時、俺は気が付かなかった。


俺と抱き締め合っている彼女の顔に、喜びとは別の感情………


────哀しみの心が浮き上がっていた事を。


続く

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