第6話 突然と必然の別れ④

第6話


「何でだ?」


思わず、そう聞いてしまう。


そんな俺に、彼女は悲しそうに、それでいて優しそうな顔で答えてくれた。


「本当はずっとアークと居たいよ。」

「ああ、俺もだ。」

「確かに勇者様の物語に憧れてはいるんだけどさ、私が誰かの為に戦えるとは思ってないの。」

「当然だろ、身内じゃあるまいし。」

「うん、私は綺麗な物が好きなだけの唯の人間。聖女様なんて大層な役割、自分には荷が重すぎる。」

「俺ですらそう思うぜ、俺は男だから聖女様になんてなれねぇが………」


彼女の言葉、一つ一つに俺はそう返していく。


だが、そんな俺に………


「なっ!?」

「ちゃんと聞いて、アーク?」


彼女は俺の顔を両手で挟んで、自分へと真っ直ぐ向けてくる。


その顔は真剣そのものだった………


────ああ、理解わかってるさ。


それでも、俺は………


「でも、魔王が暴れたら村の皆、いやアークにも被害が及ぶでしょう?」

「────だろうな。」


でも、俺は…………


「私に傷付いて欲しくない、でしょう?」

「ミリス………なら!!」


それまで理解わかっているなら、なら何で………!?


「私もそうだからよ。」

「なっ────」

「今まで貴方は私を守ってくれた。だから、今度は私の番。」

「──────────────────」


彼女の言葉に黙り込んでしまう。


その言葉自体は嬉しかった。


でも、それでも俺は…………


「大丈夫、此れからは私が守るから!魔王討伐はそのついででね!」

「────はっ、カッコいいなお前。」

「何それ!?可愛いって言ってよ!!」

「はいはい、可愛い可愛い。」

「もっと真面目に!!」

「愛してるよ、ミリス。」

「ひゅ!?ふっ、不意討ち禁止だよ………」

「これくらい防げねぇと、聖女様ははれねぇだろう?」

「そういうのは聖女様の資格に含まれまないよ!!」


と、彼女と二人で笑い合う。


彼女の気持ちはちゃんと確かめた。


後は、俺の気持ちの問題だ。


☆☆☆☆☆


その日の真夜中………


「すぅすぅ………」


隣でスヤスヤ眠るミリスの頭を撫でながら、俺は考える。


────彼女は俺を守りたいと言った。


────そんなの俺も同じだ。


だから………


「巫女様にでも土下座して、無理にでも着いていこうかな。」


土下座でも無理なら、何をしようか………


そんな事を考えていると………


ドンドンッ!


「ん?こんな時間に誰だ?」


ドンドンッ!ドンドンッ!


家の扉を叩く音が何度も聞こえてくる。


こんな夜分に誰だよマジで………


近所迷惑も考えろや、俺以外は全員寝てるんだぞ?


そう苛立ちながら、扉に手を掛ける。


「煩いなぁ、こんな時間に何の用────」


はぁ?


何で────


☆☆☆☆☆


???side


「申し訳ありません、こんな時間に。」


私の膝の上で眠るアーク様に、そう語りかける。


本当に可愛らしいお方………


やっと貴方を見つけた、やっと私を見つけてくれた………


「安心してください、アーク様。今回こそはちゃんと上手く行きます。ちゃんと上手く行かせます。」


だから………


「あの阿婆擦れ駄聖女に着いて行こうなんて下らない考え、捨ててくださいね?」


続く

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