第5話 突然と必然の別れ③

第5話


「突然だったな………」

「うん………」


先程からこの言葉だけを繰り返す。


お互いに何を言って良いのか理解わからないのだ。


今日は色々な事が起き過ぎた………


────騎士様達が村に来た。


────ミリスが聖女様に選ばれた。


────最後に巫女様まで現れた。


「────全く、とんだ厄日だ。俺達、何か悪い事でも前世でしたかね?」

「私が聖女様に選ばれたし、その私の恋人なアークは善人じゃないの?」

「はっ、それもそうか………」


理不尽な事が全て悪意であるとは限らないという事か………


それはそれで質が悪いから、やっぱり悪な気はする。


罪に問えるとは思わないけど………


「なぁ、ミリス………」

「………何、アーク?」

「お前………」


本当はとっくに彼女の答えを何となく理解わかっていた。


でも………


「………少し外を歩こうか。」

「………うん。」


☆☆☆☆☆


「懐かしいな、此処。」

「そうだね。」


外に誘った物の、何をして良いか考え付かなかった俺は、俺達の思い出の地を巡っていた。


まぁ、狭い村なので、数分も掛からず回れる様な場所ではあるのだが………


「此処で二人して村長の飼い犬ビビってたよな。」

「うん、あの時は本当に怖かった。でも、アークは私の前に立って守ってくれたよ?」

「まぁ、普通に賢くて良い犬だったから、取り越し苦労だったけどな………」


最終的には、その犬が死ぬまで俺達二人の遊び相手になってくれた良い犬だった………


死んじまった時は、二人して大泣きしたっけな………


「此処は俺達が勇者ごっこしてた場所だ。」

「そうそう、私が勇者様に守られるお姫様役で、アークが勇者様だったわ。その時から私を守ってくれる自慢の幼馴染だったわ。」

「…………………………そうだな、うん。」


それは勇者ごっこをしてた時代の後半も後半の話だろう?


其処に至るまで、お前が勇者で俺が魔王としてボコボコにされてた記憶があるのだが?


まぁ、言っても仕方ないのだが………


「そして、最後は………」


村から少し離れた花畑で俺達は立ち止まる。


やはり、最後は此処であるべきだ。


「覚えてるわ。いえ、絶対に忘れない、忘れられない場所よ。」

「ああ。此処は俺達が初めて結ばれた場所だからな………」


初めて俺達が想いを伝え合った場所。


初めて興味本位ではなく、愛を込めて口を重ねた場所。


そして、今から………


「なぁ、ミリス。」

「何、アーク?」

「お前………聖女になる気、なんだろう?」


ああ、俺は直球に聞いてしまった。


これを聞いてしまえば、本当にもう後には戻れなくなる。


それでも俺は聞いた、聞かなければならなかった。


そして、彼女は俺を見つめ、少し悲しそうな顔を見せながら………


「………うん。私、なるよ聖女様に。」


────そう答えた。


続く

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