第142話 夏の思い出,再び
お腹も朽ちくなったんで
「ご馳走様」
「お粗末さま。もういいの? そんなに食べてないでしょ」
「ううん、もういっぱい。ママの言う通りに一孝さんのを考えてたら,食べすぎたみたい」
「なら、よかったわ」
ママには感謝しかない。
私は一孝さんの様子を見にソファーに向かっていく。
すると、
「私もご馳走様ね」
美華姉さんが私についてきた。
「どうなの? 一孝の様子?」
丁度、私が彼の顔を覗いていたら、聞かれた。
肩は静かに上下して、微かに寝息が聞こえる。どしろられた瞼が開く気配はない。
「まだ、寝てる。起きる気配はないの」
ぷふぅ
背中の向こうから、お姉ちゃんが噴き出す音が聞こえた。
「なに! なにかある?」
気に触ったんで、振り返った。お姉ちゃんの唇の片方がヒクついている。
「美鳥、あなたが寝落ちして、一孝が背負って帰ってきた時に言ったの覚えてる?」
「子供みたいって,言ってましたぁ」
ムッとして私は答える。頬も膨れてきてる。
「でしょ。そしたら、まさか一孝まで食べてる最中に寝てしまうんだよ。2人して寝落ちだよ」
カチンときて、
「それが何よ」
片手を振り上げてしまった。でも悪びれず,お姉ちゃんは、
「2人とも同じことするなんて、お似合いだね。2人はお似合いだよ」
と言いながら,お姉ちゃんは微笑んでいく。視線も優しいの。慈しんでくれているのがわかった。
「いいカップルよ。夫婦善哉な訳ね」
「あ、ありがとう」
私はあげた手をどうするか困ってしまう。にぎにぎして誤魔化すしかないのよ。
そんな私たちをママは見ていて、
「まだ、一孝くんは寝かせておいてあげて。それより貴方たちは着替えの準備してね」
「はぁーい」
そう、私たち女性陣は、模様直しなんです。3人とも揃いの浴衣姿を見せることになったんです。
「じゃあ、洗い上げは手伝わないと,ママも着るんでしょ。浴衣」
「それなら、大丈夫! パパたちが片付けをえやってくれるわ」
ママは、微笑んで,テーブルで食べ終わり何か話し混んでいたパパと和也さんに話を振っていく。
「はっはい」「……俺が?」
渋々と言う具合ですが、2人は了承していた。でも私は見た。ママの視線が2人を一瞬貫いていたのを。
「美鳥、行こう」
「はい」
私は返事をしてから目を瞑る一孝さんを振り返り、
「待っててくださいね」
と告げてからお姉ちゃんの後に続く。
そして、私の部屋に美華姉さんも呼んで着替えます。一通り脱いだ後に和装キャミを羽織る。浴衣は長襦袢を下に着ないの。
そして髪型を決めてから、顔のお化粧をしていくのね。キャミが透けて見えるから男子禁制なんです。
昼のメイクをリムーバーであらかた落とした。BBクリームを肌に伸ばした後、ファンデーションをのせていく。手にリキッドをつけて肌に伸ばしていくの、一通り終わったところでスポンジで押していく。
次にアイメイク、私は春タイプらしい、オレンジブラウンのグラデーションを指で塗っていくの、目元も明るく見せていく。
そしてビューラを取り、睫毛をカールしていく。ギュッギュッギュッです。
「美鳥、どう?」
美華姉さんが私のメイクの具合を見にきた。
「だいぶ慣れてきたじゃないの。恋する乙女だねえ。見せる人がいると上達も早いね」
「へへぇ、ありがと」
「でねえ、アイラインは私にひかせて、お願い」
って早速、ペンシルアイライナーを持ち出して描いていく。
「その色って、もしかして」
「正解かな。私は,もちろんこっち」
「じゃあ、お姉ちゃんのは私がやってあげる」
自分に塗ろうとしていたペンシルを奪い取って姉の瞼のキワにラインをひいていく。
目頭から目尻へ,その先は床に平行に少し太めに描いていく。キリッとしてるけど自然な仕上がりになりました。
「ありがとね。美鳥にしてもらえるなんてねえ。嬉しいよ」
「どういたしまして。私も嬉しいよ」
お互い,満足な出来でニッコリです。
丁度そのタイミングでママが来た。
「どうかな? まあ、なかなかの出来よ」
私たちのメイクの上達具合を喜んでくれた。
私は美華姉と目を合わせてまたまたニッコリです。そして2人でアイコンタクト、首肯すると、
「「ママのメイクは私たちにさせていただきます」」
それを聞いて,ママはパチクリと目を瞬かせる。
「娘にメイクしてもらえるなんて,私は幸せものよ。もちろんお願いするわ」
って喜んでくれた。それから、メイク落としをしてもらう。その間に私たちはマスカラを済ませておくの。あとは2人でママへメイクを施していく。
進めていって気になるところがあったんでリキッドファンデーションを指で重ね塗りをしてあげていると、
「どう、右目は美鳥がしてあげて、左は私がするから」
ってお姉ちゃんから提案がありました。
「いいの」
私はママに聞いてみる。ニッコリと笑って了承してくれた。
「こんなにしてくれてるんだもの。出来は二の次。お願いね」
そんなこと言うんだもん。逆に責任重大、緊張しちゃうよぉ〜。無事にラインも引き終えました。
「お礼に2人のハイライトの塗りはやってあげる」
ママ手ずから施してくれた。チークやリップもみんなでワイワイやっていました。
一通りメイクも終わり、浴衣の着付けを始める。
「でね、こうやって、おはしょりを作って紐で縛るの。そして伊達締を巻いていくの」
私が、まず着せられていく。アイメイクと一緒で私は美華姉さんの着付けをするんだ。ママのは私たち2人でしてあげたよ。
そろそろ、一孝さんの様子を見ないと、
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