第134話 ウォータースライダー
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◇ ◇ ◇ ◇
大丈夫だよね。一孝さんと一緒だもん。小さい時から苦手なんです。
一孝さん、ミッチにカンナと一緒に遊びにきて浮かれすぎていたのかもしれない。
自分から嗾けて、だめだっけと思い出しても後の祭り。でも、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
□ □ □ □
「ちょっと待った」
ゲートに入り、滑り降りる寸前のボートを止める。
「どうかしましたか?」
ボートを押してくれたスタッフの人も慌てて聞いてきた。前に座っている美鳥も不安そうに俺を見返してきた。
多分、
「美鳥、怖いか?」
あえて聞いてみた。
コクン
恐る恐る、美鳥は首肯した。
やっぱり
「悪い。配慮が足らなかった。おれが前にすわるよ」
美鳥は、小さい時に滑り台が苦手だったんだ。
公園にある本当に小さい滑り台に登ったのはいいんだけど動かないんだ。上で立ったまま硬直しているんだよ。顔を見れば涙に塗れてる。俺がみているのがわかると頭をフルフルさせてしゃがみ込んでしまう。
降りるのって聞いてもフルフル。下ろすのに往生してたんだよな。流石に大きくなって克服できたかと思っていたけどなあ。
「うん」
美鳥のこわばった顔から力が抜けて、ホッとしているのがわかるよ。
俺はタンデム浮き輪の前へ移動して座った。美鳥も浮き輪から一度降りて後ろに移っていく。彼女が乗り込んで足を前に伸ばすと、丁度俺の腰の横に足先が置かれてくる。
俺はその足を掴む。
「きゃっ、一孝さんなんですか?」
「下に降りるまでこうしててあげる」
後の美鳥は驚いているけど、振り返り話しかけてあげた。
「安心できるでしょ」
「う,うん」
そしてもう一度聞いてみる。
「滑り落ちるのは怖いか?」
顎が微かに動くのが見えた。
「なら、声を出しな」
「えっ?」
「聞いたんだけど、声を出すと、それも大声、そうすると恐怖感が薄れるって」
「そうなんですか」
返事に不安がこもる。
「大声出すの恥ずかしがらなくてよいよ。聞くのは俺だけだしな。ぜひ聞かせてくれよ」
「一孝さんが言うのなら…、やってみるね」
美鳥が覚悟を決めてくれたんだと思う。そして俺はスタッフへ
「途中で止めてすみません。今度は大丈夫。押してください」
それを聞いて、スタッフが浮き輪を押し出してくれた。
押し出されて、すぐに左へ曲がる、
「ひや」
そのままスロープを緩く降りていく。
周りが明るくなった。
「うわぁ」
一度外に出たようだ。周りを継ぎ目だろうかリングが通り過ぎていく。
「早い、なんか早いです」
スピード感が増していくと思うと、
「やん」
右にへターンをして大きくループ状に回りながら降りていく数回は回ったと思うと
「まっ、回る、回ってますぅ」
ループを抜けた。
短いスロープを降りると右へターン。
「やあん」
周りの明るさが変わった。そしてまた、周りをトンネルの継ぎ目だろうリングが流れていき、流されている感じが増していく。
「いやあ、早すぎますぅ」
またしても大きくUターンをして降りていく。
「目が回ったゃう」
そして左にターンをしてすぐきついスロープを落ちていった。
「あひゃああ」
美鳥の叫びも大きくなり、トンネルをねけて滑るように着水した。
「ギャン」
下のプールに着水の瞬間美鳥がバランスを崩し浮き輪が大きく翻ってしまう。
「わわぁ」
堪らず俺が跳ね上がり落水。水面に出ると,美鳥は浮き輪の上でぐったりしていた、
美鳥お疲れ様ね
するとトンネルの中から女の子の嬌声、こっちは楽しそうだ。ユニゾンで聞こえてきたと思ったらそのまま飛び出してきた。
水に浮かんでいる俺目掛けてきたんだ。慌てて逃げたけど間に合わず、背中側にぶつかってきてきて,そのはずみで2人は浮き輪から投げ出されてしまった。
でも、無事なようで、
「おもしろかっなね もう一度行こか」
「はい、美鳥ちゃんが降りた
方にいってみましょう」
楽しそうに話をしてるよ。まあ,無事で何よりだね、
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