第104話 モーニングアタック 再び
「お姉ちゃん」
「お兄ぃの顔、かわいいね」
「だね。ふふ」
なんか耳元が騒がしい。夢じゃないよな。瞼を通して明るくなっているのがわかった。
起きるか。
瞼を開き、眩しさの中、ぼんやりと人影が2人見える。
誰?
そのまま、飛び起きてベッドの上に立ち上がった。
目が慣れてくると亜麻色のおかっぱ頭にPIYO柄のパジャマを着た女の子と白い頭巾を被っているふんわりなワンピースを着た女の子が2人いる。
俺と同じベットの上に座っている。頭巾を被っているのは美鳥だよな。一緒に花火を見に行って色々と屋台を見たり、花火を見たりしていたんだ。藍色の浴衣が似合っていたな。
もう1人の小さい子。
美鳥と同じ透き通る亜麻色の髪と碧の交じった淡いヘイゼルの瞳で俺をみてくる女の子。
コトリ
思わず安堵の息を吐いた。
はぁー
心配も蟠りも全て吐き出せた。
そして、ゆっくりと大きく息を吸う。
心がさ、広がって幸せで満ちていくんだ。
「よかったぁー、コトリと美鳥、いる」
すうって言葉が口から出ていく。
キョトンとしたコトリの顔、
「お兄ぃ」
何か、確かめるように、囁いてくる。
「ただいま」
体に溜まった幸せが俺の顔を綻ばす。
「おかえり」
コトリの顔で笑顔が破裂した。
「ただいまぁ」
コトリは俺に抱きついてきたんだ。
俺もコトリを抱気返してあげた。
そしてコトリの亜麻色の髪の毛越しに彼女が見えた。
美鳥
彼女も笑っている。
「一孝さん、コトリが戻ってきたよ。よかったあ」
しばしの抱擁の後、コトリを開放する。
「そうだ。美鳥、コトリ」
2人の顔を交互に見て、俺はにっこり笑う。そして、
「朝だね」
「「「おはよう」」」
3人の声が朝日満ちる俺の部屋に響き渡った。
俺は2人の笑顔を見ながら、ベッドを降りる。簡易キッチンへ向かって電気ケトルに、ウォーターピッチャーから一晩置いた水を注ぎスイッチを入れる。
「そうだ。美鳥、ごめん」
「えっ何が?」
笑顔が少し曇ったかな。
「丁度、珈琲の豆切らしてて、紅茶でいいか?」
「なぁんだ。一孝さんの淹れた紅茶美味しいから好きだよ」
「ありがとうな」
湯が沸いたんで、以前飲んだニルギリを使って紅茶を淹れる。
湯を分けてカップにも注いであっためる。
そして蜂蜜を用意する。砂糖の代わりに使うんだよ。それも色付きの薄いものを準備した。蜂蜜だと色が変わってしまい、体に無害ではいるのだけれど異物ができてしまう。でも、ここで冷蔵庫にしまっているレモン汁を投入するんだ。こうすると色味も戻るんだね。
不思議なことに、コトリは飲むこともできる。全く飲んだものは、そして食べたものは何処にいくのやら。コトリは、今、淹れた蜂蜜檸檬紅茶は気に入ってくれた。
ところで、この部屋にはカップは3つ用意してある。俺とコトリ、そして美鳥のものも最近増やした。
トレーに紅茶を注いだカップを乗せて簡易キッチンを出たところで、インターフォンがなる。こんな朝から来客とは、珍しい。
ん、
何か、頭に引っかかった。
インターフォンの応答スイッチを押すとミニモニターへ美鳥の顔が映し出された。亜麻色のショートボブの髪。ブラウンの瞳。
違う。この人は、
「あっ、一孝くん。おはよう。迎えにきたよ」
そういえば、美鳥を迎えにくるって昨日言ってたっけ。
髪の毛の色は同じ、顔立ちもほぼ同じ。違うのは髪の長さと、わずかにブラウンの目が濃く見えるかどうか。
確かめるように、俺は振り返ってリビングにあるテーブル脇に座る本物の美鳥を凝視する。
「なんでしょう? どうかしましたか?」
美鳥と、その隣に座るコトリも同じ仕草で小首を傾げる。
「美桜さんが来たよ。美鳥を迎えにきたんだ」
「ママが?」
「ママなの」
俺は首肯する。
「早いよ。まだ着替えていないよ」
美鳥が首を左右にフリフリ、ワタワタし出す。
そんなことなんかしてて、美桜さんをほっぽってしまった。
「一孝くん、お〜い。あなたが大好きな美鳥のママの美桜ですよぉ」
インターフォンから、そんな恥ずかしい催促と言葉が出てきている。
仕方ない、
「すいません。今、ドアを開けますから6階へ上がってきてください」
そしてオープンのボタンを押す。
「どうする?」
俺は美鳥を見る。
「どうしよう?」
美鳥は俺と………、
隣にいるコトリを交互に見て、
「どうしましょう」
コトリは、何処かヒョヴヒョウと、
「ケセラセラだよぉ」
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