第103話 おはよう
パラっ、パラっパラっ、ドッ、ドッ、ドンドンドーン
音花火、五段雷が鳴る。
「ああー」
耳元の叫び声で目が覚めた。目を開けると前にはPIYO柄。目線を上げると、上下に動く肩と亜麻色の髪。
「コトリちゃん」
起き抜けで、言葉に力無いな。
目の前の腕が引かれ、潤んだヘイゼルの瞳が私を覗き込んでくる。
「お姉ちゃん、音が……」
私は、バッと跳ね起き、コトリを胸に抱き込んだ。
「コトリー」
「クルシ…お姉ちゃん、苦しいヨォ」
すぐにコトリを解放して、顔を凝視する。
「コトリだよね?」
「ハイハーイ!、コトリだよー」
再び、コトリを抱いてしまう。
「コトリー。コトリー」
「お姉ちゃん。どおしたの? 苦しいヨォ」
コトリは私の腕の中でジタバタし続けた。
私は、前髪越しにコトリの額を頬擦りした。
「よかったぁ、コトリの目が覚めたぁ」
「えっ?」
コトリの顔を見れば、キョトンとしてる。
次第に彼女の口が大きく開く。
「あっー」
「そう、まわりがまぶしくてね」
「うん」
「体がふるえるの」
「うんうん」
「わかんなくなっちゃって」
「うんうんうん」
「ごめんなさい」
「コトリちゃん、『ごめんなさい』 じゃないんだよ」
「え?」
「ただいま…だよ」
「うん、ただいま エヘ」
「おかえり」
またまた私はコトリを抱きしめた。
コトリ越しに、隣を見る。
壁際に大事な人が寝ている。
寝ている時の一孝さんの顔、かわいい!
「お姉ちゃん」
「お兄ぃの顔、かわいいね」
「だね。ふふ」
思わず笑ってしまった。
こんな機会なんて、今までなかった。私の心のアルバムに、また一枚。
その内に彼が身じろぎし始め、瞼が開く、目が覚めたかな。
「美鳥…」
一孝さんは、飛び起きると私たちを見たの。
「はー」
そして大きく息を吐いて、
「よかったぁー、コトリと美鳥がいる」
「お兄ぃ」
コトリは彼に、
「ただいま」
彼のきよとんとした顔から、笑顔になって、
「おかえり」
「ただいまぁ」
コトリの元気な声。
私も元気を貰える。
一孝さんがいう。
「朝だね」
ー おはよう ー
一孝さんの部屋に3人の声が響いた。
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