第98話 藍の衣 舞う 2

私は一孝さんに手を差し出した。


「一孝さん、連れてってね」


 そうしたら、彼は差し出した私の手を取ると跪き、キスしてくれる。これって、


「何なりと、お姫様」


 って、微笑んで私を見てくれた。


「なっ!」


 顔から耳も首まで熱くなっていく。胸も’好き'でいっぱいになる。


 「何、恥ずかしいことを言ってるんですか、大勢の面前で! でも」


 私は彼の手を取り、



「うれしいです」


 顔のところまで持ってきて、頬擦りする。


彼の顔も真っ赤。


   ふふっ


 小さく笑ってしまった。お返しできたかな。


 少しだけ一孝さんの恥ずかしがる顔を鑑賞して、持っていた手から腕に抱きついていく。


一孝さんに寄り添って、屋台の列に歩き出していったの。


 早速、


「ねえ、一孝さん。イタリアンスパボーってなんなんですか?」


 なんでかな、ギョッとした顔で私を見てくるの。


「コトリか? 戻った?」


「違うよ、美鳥だよ。コトリとなんかあったkの?」


 彼は、空いてる手で頭を掻きながら、


「いやっなぁ、コトリに質問攻めされた。これ何? って、その度にとまってなぁ」


「買って食べたと」


 なんだぁ、そうだったんですね。でも、その時のイメージないな。食い気優先だった?


「俺も、興味あったしね。でも、これはまだだなあ。買うか?」


「はい、私も興味あります」


 にっこりと返事しました。彼も破顔する。


「塩、砂糖、ココア、おっ!抹茶なんてあるよ」


「私は塩で」


「俺は、抹茶かなぁ、すみません。塩と抹茶ひとつづつください」


 でも、私は、


「一孝さん、ちょっと。…すみません。抹茶だけでお願いします。


『あいよ』


 彼は私の顔を見て、


「いいのか、俺と同じで」


「いいの。行きに、あれだけ食べたんでしよ。まだまだ、見たいから、これで」


 私は帯のあたりを摩りながら、答える。


「見たいじゃなくて、食べたいだろっ。…つっ」


「ごめん遊ばせ、足先踏んでしまいました。痛くないですか?」


「こいつぅ」


 彼は私の頬を突いてくる。お互いにっこりとしています。


また、しばらく歩いていく。そして、


腕を抱き直し、ある屋台に指を挿しながら、


「一孝さん、喉、乾きませんか?、かき氷です」


「おっいいね。何にする」


 油っ濃いのも食べたし、彼も水気が欲しかったんだろう。私も欲しいの。


「いちご、レモンにメロン、ブルーハワイもあるね、何ににしよう」


 私が迷っていると、彼は耳元に口を近づけて、くすぐったいのに、


「美鳥なら、メロンかな。それともライム、レモンライムで、レモンかな?」


「!」


 以前、連休で体験した記憶が蘇る。


「でもね、みんな同じ味だたりするんだよ」


 私は手を胸にあわせて、息を吐く。


「もう、変な記憶を呼び覚まさ背で! じゃあブルーハワイで」


「ははっ、そこでブルーハワイか。ははは」


 一孝さんは笑いながら、かき氷を頼んでくれた。


「ひとつ?」


「ひとつ」


   シャシャシャ…


『お待ちど』


 カップに入った青く彩られたかき氷は、


「綺麗」


 彼に渡され、そして私の手元にくる。通りを外れ、屋台の間に身を寄せた。


「もう、あれはあれで、大変だったんだからね」


 一孝さんの腕から手を外し、彼に詰め寄った。


「綺麗だったし、よかったのに。また、やらないのかな?」


「もう!」


 私はストロースプーンでかき氷を掬い。一孝さんの口へ持っていった。


「召し上がれ、アーン」


 彼は目を見開き、困惑したけど、口を開けてくれたんで、そっとあげた。


 ちょっと多めだったのか一孝さんは額を抑え、俯く。


「キーンってきたよ」


「いきなりなことを私に言うからです。お姉ちゃんいなし、3人揃わないからやりません」


「ひとりでもいいじゃ…」


「やりません」


 私は、自分でかき氷を掬うと、口の中に放り込んだ。


   キーン


 顳顬を指で押して押さえる羽目にはなりました。


 彼が先に復帰して、


「俺はライム好きだよ、綺麗だったし、かっこよかったよ。また見たいね。頼むよ」


 私も復帰した。


「うーん、悩みどころではありますね」


 再び、カップからかき氷を掬い、口にしようとしたら、一孝さんはスプーンを私の手から、持っていってしまう。


そして、


「アーン」


 差し出してくれた。


私はスプーンの先と彼の顔を交互に見ながら、氷を口にしていった。


「ははっ、その顔、すごく可愛い」


 えっ、どの顔かな。寄り目だったら、嫌かな。


「もう、ふええ〜ん」


 それから、氷がなくなるまで、交互にお互い氷を食べてさせていきましたよ。恥ずい、嬉しい!


そして食べ終わると、私は、また一孝さんの腕をかき抱き、寄り添って、通りを進んでいく。しばらく進むと、


「一孝さん、これがステックワッフルなんですね」


 それを売っている屋台の前に来た。確かにステックになっていて食べやすそう。チョコのかかっているから美味しそう。


「じゃあ、何にする?」


「う〜ん。ストロベリーチョコかなぁ」


 一孝さんが破顔する。


「コトリも、それを選んだよ」


 私は彼に振り向きながら、


「えー、印象にないよう。美味しいとは思うけど、うーん」


 一孝の笑みが止まらない。


「俺もストロベリーは食べてないから、食べてみたいし」


「決まり! ストロベリーチョコで」


 店の人に頼んだ。


「はいよ。ありあっとさん。彼女、可愛いねえ。羨ましい」


 店員さんのリップサービスには、2人とも照れてしまいました。


「いちごチョコ美味しい、当たりだね」


「あぁ確かに、美味しいわ」


 ワッフルを食べなから、通りを歩いて行きます。


「さて」


 しばらくして私は一孝さんから離れて、拳を握り肘を脇に絞めてます。


「お祭りといえば、定場のこれです」


「おーどんどんどんどん、パフーパフー」


 一孝さん、変な合いの手、止めてぇ。


 私は、唇を舌でするりと湿らせて、…いきます。


「すいません。りんご飴、小一個ください」


「毎度あり」


 もらって直ぐに包装を解いて、口にした。


「あま〜い、やっぱ、これですね」 


 一孝さんは腕を組み、隣を歩いている。私は片手をぶら下げるような絡ませて、歩きながら、りんご飴を楽しんだ。


「美鳥は、小さい時から、りんご飴が好きだったもんな」


 微笑みながら彼は言う。


「だって、楽しみにしてるんだもん。いいでしょ」


「ははっ、良いよ。お前がいうんだ。良い良い」


「ウフフ、はい、りんごが出ちゃった。一孝さん、齧っていいいよ」


 微笑んでる彼にりんご飴をかざす。そして一気に半分を齧ってもらう。


「うん、美味しいよ」


 私は、残りをゆっくりと楽しんだ。一孝さんと間接キスだと思いながら、微笑んで。   


 りんご飴もなくなり、2人で人混みの中歩いていると、大鳥居が見えてきた。屋台の列も終わる。


 鳥居の側には、公園があり、幾つかベンチもあった。そのうちのひとつが丁度空いたんで2人で座った。


   バシュツ、シュー、どドーン。上り龍、二重菊先、一発


 の花火が上がった。銀色を引いて、青い芯と白い飛跡。体を震わす、大音場。


「もう、こんな時間」


 私は手首を返して、時計を見る。花火の明かりが消える前に時間がわかった。


「終わりだね。花火が上がって」


「そうか、じゃ花火楽しもうか」


「はい」

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