第70話 ライム 再起動

 振り返ると、美鳥が立っているのだけれど、未だにねむいのか瞬きの間隔が早く感じられる。起き掛けで指で下瞼の辺りも、擦ってたりもしている。

 少し屈み、俺はライムと目線を合わせて、


「起きたのか? 大丈夫かな?」

「まだ、ちょっと眠いの。でも…」

「もう少し寝ててもいいよ」


 ここで美鳥は、目を一旦瞑って、一呼吸おいて目を開けた。そして俺を見返してくる。


「いつまでも寝ていられない。ママたちに甘えるだけじゃダメなの」


 美鳥は俺のところに、にじり寄ると、


「だから、私にも何かやらせてください」


 真摯な喋りだった。俺は直ぐそばにいる、オーナーの守道さんへ向くと、


「ライムにも、何かしら振り分けて、もらえますか?」


って聞いてみた。


 美鳥も守道さんを見ているのだが、そのうちにテーブルの間を滑っているシアンとマゼンタが気になるのか、2人の動きを目で追い出した。


「でも、わたし、ローラースケートってできないよ」


 ガックリと肩を落としている。

でも、守道さんをは、笑いながら、


「はっはー、別にローラースケートで、動いてくれなんて言わないよ。そうだね、お客から注文を聞いてくれると助かるよ。俺1人じゃ、捌ききれなくてね」


 そうか、今はオーナーが1人で注文集めていたっけ。


「そうだよ。注文を聞くだけなら、ローラースケートなんて履かなくてもいいんだ」


  まだ、足の捻挫だって完治していない。

 俺の両手は美鳥の肩をもって、


「大丈夫。美鳥がにっこりと笑顔で'何にしましょう'って聞けは、いいんだよ」

「はっ、はい」

「みんな、君の素敵な笑顔にどんどん頼んでくるから、ね!」


 俺は美鳥に笑顔を向ける。


「俺の可愛いライム」

「うっぅ、一孝さんの笑顔もずるいよぉ」


 俺が肩を持って動けないせいか、頭をブンブン降って恥ずかしいがっている。

 交互に赤く染まった耳を見せてくれた。

もうひと押しかな。


 タイミングを合わせて、額に軽く、唇を


   ♡


「んー!」


 直ぐに唇を離して、美鳥を顔をのぞいて見た。なんか表情がフリーズしてた。

目元から頬までピンクになってる。メイクで隠せないほど、赤くなっているのかな。

やっぱり可愛いや。


「頑張ったら、続きあるから」


 耳元へ俺の唇を近づけて呟いてあげる。


   ビクン


 美鳥の体が震えた。


「はひぃ」


 良い気付になったかなあ。


「はっはっはぁー、良いものを見せてもらったよ、ご馳走様だ」


 直ぐ側から、守道さんの声が笑っている。


「じゃあ、ライムを頼みます。教えてやってください」


 ライムの体の向きをくるりと変えて、


   とんっ


 チュチュスカートの上から軽くタッチして守道さんのところへ押してあげる。


「!」


 ライムが後ろに手を回し、素早く振り返る。


「一孝のエッチ! もう知りません」


 俺は、笑いながら、テーブルスペースへと行き、後片付けを始める。幾つか終わると、周りが見え始めて、食べ終わって立ち去る気配見たいのを感じるようになった。少しは余裕めいたものがてきたのかな。


「ありがとうございました」 


 食べ終わり帰ろうとするお客様へ、お礼をのべてから自分の役割を果たす。テーブルの上を片して消毒をする。

 でも、そんな中でも美鳥を探してしまう。

 今は、美鳥は守道さんと一緒に回って実地でレクチャーを受けているようだ。

たまに、美鳥と目があってしまったりするだけれど、その時の嬉しそうな顔の可愛いこと。スマホ用の望遠アタッチメント欲しくなりましたね。


 また、幾つかテーブルのバッシングをしていると、声をかけられた。


「そこのテーブルは、空きますか?」


 おろ、

 

 この声は聞き覚えがある。振り返り見ると、確か美鳥の友達だ。


「川合さん」


 俺の呼びかけに、彼女の驚き顔が見れた。その後ろには、お連れさんがいる。


「風見さん。こんなとこで、バイトですか?」

「まあ、そんなとこだよ」

「あなたがいるということは、美鳥もいるってこと? 」


 川合さんは辺りをキョロキョロと周りを見回していく。


すると丁度よく美鳥の声が聞こえできた。こっちに向かってきている。


「一孝さ〜ん、1人でやるように言われたけど自信ないよぉ」


 ライムは俺の所までくると、腕に抱きついて来たんだ。泣きも入っている。


「風見さん、いったい?」


川合さんは、そんな俺とライムを交互に見て、俺に噛み付かんばかりに問い詰めて来た。


「ちょっと浮気! 美鳥がいるのに、」


 


すると、


「あれぇ、歩美?」


 ライムは、川合さんが目の前にいることに、やっと気づいてくれた。


でも、


「あなた、誰?」


 川合さんは訝しんだ。彼女は、まだ気づいていない。ライムは、誰なのかを、

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