第20話 春 何番目の旋風
美鳥side × × × × ×
◇ ◇ ◇ ◇
ホームルームが終わると歩美がポーチを持って教室を出て行ってしまった。私が鞄へ教科書やノートを入れていると、
「琴守さんて、このクラス?」
と言って男性が教室に入ってきた。知らない人だ。
「琴守は私ですが」
「そうなんだ。かわいいねー、聞いたよりもっと良いよぅ」
「どうだった」
もう1人、いや2人ついてきた。
「ビンゴだよ。噂以上だね」
なんか、この人たちは勝手に盛り上がっている。
怖い。怖い。私を品定めしている目線がいやぁ。恐怖を感じる。歩美もいない。背筋を冷たいものが迫り上がってくる。
ふえエェーん
一孝side◇ ◇ ◇ ◇ ◇
□ □ □ □
朝からハイテンション上機嫌なコットンのダンスに俺はヘキヘキしながら、やっとこさ1日のプログラムが終わることができた。
「一日中踊りまくっていたな、気分はどうだい?」
「上よ、上々よ、最高よ」
コットンはいい汗かいたよっていった雰囲気を出して、こちらに顔を向けてきた。清々しい顔をしていたよ。
「 っ」
でもいきなり後ろへ振り向いた。
「なんか寒い。震えが止まらない」
二の腕をさすり出した。
「どうした?」
「なんか寒気がする。美鳥が怖いと感じてい流」
すると
左の席の佐々木さんが教室の前を指さして、
「ねぇ、あの3人て3年の先輩だよね。いろいろと声掛けまくってナンパしまくってるっていう」
「部活の先輩からも近づいてきたら直ぐに逃げろって言われてるよ。確か泣き出した娘もいるとか」
佐々木さんと話をしていた高谷さんも追認する。
俺も美鳥の前にいる3人を確認した。居ても立っても居られず美鳥の席に向かう。
「行けぇ!ぶっ飛ばしてよいぞ!俺が許す」
威勢のいい応援が後ろにいるコットンから飛んできた。
近づいていくと河合さんがいない、席を外している。
(タイミング悪かったなあ )
あの3人の先輩方は、
(あれ!こいつら見覚えがある[)
見た感じ、多少ガタイはよくなっているけど、同じ中学に居た奴らだ。
俺は、美鳥の後ろに立って、手を肩に載せた。
「ふえぇ」
美鳥が小さい叫び声あげて、こっちを見てきた。先輩方もこちらに視線を向けてきた。
「その辺にしてもらえますか? 琴守さん怯えていますよ」
「てめぇ、誰?」
「クラスメートでしょうか。丸尾先輩、音野先輩、乾先輩」
名を呼ばれた先輩方は訝しむ目で俺を見てくる。
「俺らの名前を知ってるって」
こっちを更に睨みつけてきた。
「おいお前、風見か?」
「はい、風見ですが」
こちらの背格好を見て俺を思い出してくれたようだ。何、同中でも悪さしていたこいつらを折檻していただけだから、恐怖感を感じることはない。
先輩方が慌てて話し出した。
「あいつ、事故に巻き込まれて死んだって聞いたぞ」
「おれは高校やめたって聞いた」
「僕は圧死したって聞いた。ざまぁだよね」
聞いていると、当時の混乱具合がわかります。
でもね、俺はここにいる。
「いえいえ、今年から復学して1年生からやり直しですよ。先輩方」
先輩方の顔色が変わっていく。
「興が冷めた。帰るぞ」
逃げ腰になっている御三方に、
「先輩方」
俺は美鳥の後ろから手を回しハグした。俺のだと自慢するように、そして見せびらかすように。 (もちろん演技です。)
「こいつ、俺の妹分なんですよ。以後、宜しゅうお願いしますよ」
(イタタタ)
途端に痛みが走る 。美鳥がハグしている手の甲を抓ってきた。あの時、コットンの頬を抉った力でつねって来たんだ。
「そういえば先輩」
すでに腰のひけた先輩たちに、
「なんだ。まだあるのかよ」
「織田先輩はこの学校ですよね。今は何組ですか?」
「この学校、締めてるのあいつじゃねえ、
「いえいえ話を通しておくだけですって」
「ふん」
3人とも、そそくさと教室からでていってしまった。
しばらく静かな状態が続いた。美鳥をハグから解放して、
「ごめんなさい。琴守さん。抱きついちゃて。もう大丈夫だからね」
美鳥は未だ震えていた。こちらも見てくれない。
少しだけたって、絞り出すような声で
「こわかったよぉ。おっ、おっ、」
「美鳥!」
そこに河合さんが帰ってきた。教室の騒ぎを感じたのだろう。駆け込んできた。
「何かされたの?大丈夫?ふるえてるよ」
俺の方をキッと見てきて、
「美鳥、こんなに怖がってますよ。風見さん何かしました?」
詰問して来た。俺は両手をあげて降参のポーズをする。すると近くから、
「琴守さん、先輩に絡まれてよぅ。風見が追い返したんだよ」
クラスの奴らか完結に説明、援護してくれた。
「そうなの美鳥」
河合さんは美鳥に聞いた。美鳥は、まだ話すだけ回復をしてないようで小さく顎を引いて答えた。河合さんが美鳥の頭を抱き抱え、
「ごめんね、一人にしちゃって」
そして俺の方を向いて来て、
「ありがとう。美鳥を守ってくれたんだ」
見た感じに、後は河合さんに美鳥を預けて大丈夫だろう。
俺は自分の席に戻った。
左隣の席で一部始終を見ていた佐々木さん、高谷さんに
「風見さん、何者?」
と驚きの目で見られてしまった。
「ただのクラスメートですよ。そういうことにしておいてください」
と告げておく。
席に座り、
「コットンどうだった」
「上出来だね、よくやったよナデナデ」
授業も終わり、マンションに帰るとコトリがいきなり足にしがみついて来た。
「なんか、すごーく怖かった。震えが止まらないの」
涙の溢れそうな目で俺を見てくる。
「でもね背中からキュとなって暖かくなって安心したの。お兄ぃがぎゅっとしてくれるのわかったよお。お兄ぃ大好きぃ」
俺はコトリの頭を撫でてあげた。
「よかったな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます