第19話 笑顔 笑顔 笑顔

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 俺は早めに登校した。もちろんコットンの様子をみるためだ。教室に入り自分の机まで行く。コットンは机の上に両手で顔を覆い、しゃがんでいた。


「ううっうっうううううっ」


 咽び泣くような声。肩も震えている。無事に頬の傷の処置をした後、急変したのだろうか。


「コットン。気を落とすな、な。また他のやり方を考えよう」


 コットンの肩に手を置いて慰めようとした…


「ばあ!」


 ぱっと両手を開いてコットンは満面の笑顔を見せてきた。


「見て見て、このお、は、だ。ツルッツルっのプリンプリンでしっとりしてるのよ」


 コットンは立ち上がりルルベからポアントへ片手を前に伸ばして片足を後ろに伸ばす。そしてエレガントに両手を振り体を捻りつつ回していく。


「ほほほほほほ」


 絶好調に喜んでいた。紛らわしい。俺はコットンの頬を突いてやった。確かに良い弾力があってつるんとしてる。それでいて、しっとり。ほんとに昨日は上手にできたんだね、よかったよ。


「よかったな。まあ、わかったから静かに座っててくれ。鬱陶しい」


 踊るコットンを抱き上げ、机の端に強制的に座らせた。しばらく頬を膨らませヴーヴー言ってる。

 そのうちに多くのクラスメートが教室に入ってきた。


「おはよう」


 美鳥の声が聞こえて来た。そちらを見ると美鳥も満面の笑顔で教室に入ってくる。早速、後ろの席の河合さんと一言二言話しながら席に座っているのか見てとれた。あちらも快癒したようだ。よかったよ。

 あれっ、河合さんは美鳥の顔を覗き込んでいる。特に目の当たり。


『えー』


 という叫び声が聞こえた。何かあったのだろうか。気になって2人の席まで移動して聞いてみた。


「叫び声したけと、何かあったのか? 大丈夫か?」

「えっそんなに声大きかった、恥ずいなぁ」

「なんでもないです。大丈夫です」


 河合さんは軽く頬を染め、美鳥は相変わらずの塩対応。

 あれっ、よくみると美鳥の目がいつもより大きく見える。もともとアーモンド型で綺麗な形の目だけど、今日は一段と良い印象になった。前髪の処理を変えて目がよく見えるようにしてる。

 一重で瞼が重い感じがしていたのがパッチリの二重になっている。河合さんが茶化して来た。


「風見さん、ポカンとしてる。さては美鳥に惚れたかな?」

「歩美、よして。風見さん困ってるよ」



 美鳥は大事なさそうなので俺は席に戻ることにした。


「コットン」

「なあにぃ」


 コットンは返事をして、こちらに向いてきたところを更に手で抱え込み、目を見る。確かにパッチリしている。デフォルメされた目が更に大きくなっている。


「瞼を二重にしただけで、こうも変わるのは驚きだね」

「だろ! もともと地は良いから、映えるんだよ」


 コットンはパチパチと瞬きをしてアピールしてくる。

 改めて美鳥を見ようとしたんだけど男女分け隔てなく人だかりができて、見えなかった。


 昼になり食堂にきた。今日はスープカリー、ゴロゴロ野菜に手羽元。付け合わせはトマトにチーズ載せオリーブオイルかけのカプレーゼ。初めて食べたんだが美味しかった。

 舌鼓を打っていると美鳥を見かけた。男女混合のテーブルで談笑している。河合さんはわかるのだが、男の方は同じクラスではなかった。

 そうだ昨日告白していた子だね。昨日は呆然とした顔をしていたけど、今日は笑顔になっている。

 美鳥から笑顔が伝染したんじゃないかな。人見知りで引っ込み思案だった娘の成長を見る父親、いや兄の気分で眺めていた。嬉し寂しというところでしょうか。

 昼休みも終わりに近づき、美鳥たちのテーブルは、お互いにに小さく手を振りながら別れていった。良い雰囲気だったなあ。


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 ウキウキ、私は気分が良い。朝、起きて鏡を見たら驚いた。願っていたことが叶ったんだ。登校して、先ずは歩美に見てもらおうと歩きも早い。


「おはよ 歩美、ニコニコ」

「美鳥だよね? 誰かと思ったよ。ほっぺプリプリ! あれぇ瞼が一重から二重になってる!別人じゃん」


 歩美も驚いてる。私だって鏡を見て驚いた。二重瞼!憧れの二重ですよ。


「瞬間接着剤でも使ったかな、都市伝説なの」

「あれって肌負けで赤くなって大変てネットで書いてあったよ。ひどいなぁ、朝起きたらなってたのよ二重に。お祈りが通じたのかしら」

「いってろ」


 周りにも騒いでたのが聞こえたのだろう、お兄いが近づいて来たのには驚いてしまう。

 その後は近くの子達が集まって私の顔の鑑賞会。驚愕、感嘆、歓声が飛び交ってしまう。


 昼になり食堂で、昨日告ってきた子に再会した。気まずそうにしていたけど、今日の私は機嫌が良い。まずは頭を下げて挨拶をした。


「昨日はごめんなさい。調子悪くてダメダメだったの。気分もおちこんでしまって。今は、とにかくお友達を沢山作りたいんの。だからかな、もっといろんな話をしたいの。あなたのことの話も沢山聞かせて私も話すよ。お友達から始めていこうよ」


 とびっきりの笑顔で話せたと思う。彼は快諾してくれた。少しづつだけど話をしてくれた。私もお話しできた。楽しいよぉ!


「またね」


 ハッピーな気持ちで昼をすごせたよぉ!


食堂から出る間際にお兄ぃを見かけた。なんか複雑な顔をしている。嫉妬かな。むむぅ。

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