第17話


『ごめん』


 いろはが夕食の準備をしていたところ、珍しく桃からメッセージが飛んで来た。


「早く風邪治してね——っと」


 返信すると、すぐに既読が付いた。


「………」


 が、いくら待とうが次の返信はやってこない。


「なんだ、やっぱりいつもの桃じゃない」


 最初の返信にごめんはよくわからないが、返信出来る程度には元気でなによりだ。……だがやはり、ごめんとはどういうことだったのか。風邪ひいてごめん? 別にうつっても無い。謝られる筋合いもない。


「ごはんまだ~?」


 リビングのソファでぐったりしていたアイは、ゾンビ映画さながら、のそのそと匍匐前進でやってキッチンへやって来た。ごめんの真相を追うのは止めて、目の前のゾンビにエサを与えることにした。


「もう出来るよ」


「どれどれ、今日はカレーライスですなぁ」


「匂いで気づかなかったの?」


「カレーと言ってもカレーうどんかもしれないわけさ。この目で確かめるまでは何が起きても信じないのである!」


「そうですか」


「も~、いろはちゃん冷た~い!」


「これが普通の反応でしょ」


 仮にもアイは学校の教師である。プライベートとはいえ、もう少ししっかりして欲しい。


「そういえば、知ってたら教えて欲しいんだけど」


「なにさ」


「桃って今日休みの連絡来てた?」


「ああ~、例の白衣を着た武闘派ちゃんね」


「武闘派じゃないんだってば」


「そう? いろはの為に同級生を殴るって時点で、かなりの武闘派だと思うけど?」


「……沸点が低いのは認めるけどさ」


 アイが言っているのは、中学生の時に起きた事件のことだ。


 桃は同級生を殴った。


 グーパンチで。


 顔面を思いっ切り。


 その騒動がキッカケで桃は停学処分を受けた。


 暴力事件なんて起こしていなけば、桃は偏差値がもっと高い公立高校に通えたはずだ。


 だからこそ、吹っ切れて桃は相談に乗ってくれている。いろはがまた傷つかないように、色々手回しをしているはずだ。その確信がいろはにはある。


 それなのに当の本人は偽物の恋人なんてものを作り、自分から壁を築き上げてしまった。

 

 これなら例えバッドエンドだとしても、いろはが傷付くだけでいい。桃が傷つくような展開にはしたくないのだ。







<あとがき>


 たまにはあとがきを書いちゃったり。


 どうも。作者の四志・零御・フォーファウンドでごわす。


 よろしければブックマーク◇、評価☆、応援♡を押していただけると嬉しいです。


 次回からまた視点が変わります。今まで焦点が当たっていないアイツです。


 それとですね、お話全体としての半分か三分の一ぐらいは通過しました。更新ゆっくりかもしれませんが最後まで読んでいただければと思います。

 

 ほな。


 

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