有為の奥山 今日越えて
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第15話
「なぁ、オレたち、付き合わない?」
瀬里奈はその日、道明寺爽助から告白を受けた。
「……えっと、私のどこが好きなのかな?」
胸だろ。
中学の時からやけに大きく発達した胸は、思春期真っ盛りの男子から厭らしく見られていた。
性欲に満ちた獣の視線。
興味の無い男たちから向けられるほど、気色悪さが増大していく。
やがてそれは、自らの身体に対する嫌悪感へと変貌を遂げていた。
中学2年生の春。
瀬里奈はその感情を昇華させた。
「七尾の全部、かな」
「そっか。嬉しい」
何が全部だ。胸なら胸だと言えばいいものを。
「あの、答えは?」
「うん、いいよ。これからよろしくね、道明寺——爽助くんでいいよね?」
「も、もちろん! これからよろしく、瀬里奈」
なんかキモイ。
サッカー部で期待のエースだと噂で聞いたが、そんなもの瀬里奈にとって何の価値も無かった。
むしろ、嫌悪感が湧いて来た。本当に好きな相手以外から向けられる好意ほど、気持ちの悪いものはない。
だったら誰が好きなのか。
それは瀬里奈にもわからない。
同級生の橋田、後輩の久保、塾講師の西川、他にも沢山の男と付き合ったり、恋人と勘違いするような関係を中学生の頃から築いたのだが、その男たち全てが気持ち悪いとしか思えなかった。
高校生になり、いよいよ好きな人なんてものは現れないまま、2年生を迎えた。
「今日は一緒に帰りたいところだけど、部活があるからまた今度な」
「うん。サッカー頑張ってるのは知ってるから。えっと、頑張ってね!」
「ありがと。瀬里奈に言われるとスゲーやる気でる」
爽助はそれじゃあと言って軽快な足取りでグラウンドへ行ってしまった。
「……今回もダメかな」
今までの男たちと比べ幾分かはマシだが、それでも嫌悪感は確かに存在している。
ため息を吐いて落ち込む瀬里奈の横を、女子2人組が通り過ぎた。
小突き合いをしながら歩いていき、校門を出る直前、ポニーテールの女子がもう一方のおさげ髪の女子に抱き着いた。
おさげは「もぉ~」と言ってまんざらでもない様子。ポニーテールの女子はそのまま甘えるようにぎゅっと抱き着いたまま、校門を右に曲がり、瀬里奈の視界から消えてしまった。
その時、瀬里奈の頭に1つの考えが浮かび上がった。
「……女子ならイケるか?」
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