第///話
「それじゃあ、事実確認なんだけど七尾さんは西川先生と付き合っているのかな?」
「違います」
「そ、そんなウソ吐かないでくれ!」
「西川くん、まずは冷静に」
「す……、すみません」
「……付き合ってはいないです。そういうこともしてませんし」
「そういうことをしたのなら、呼び出しで済まなかったけどね」
「塾長せんせ、西川せんせのことは、どうか寛大な処分をお願いします。私が西川せんせに勘違いするような言動をしたのがいけないんです」
「七尾さん、君の気持ちは汲み取るが、最終的な処分は大人が判断することになる」
その言葉に、西川がひぃと息を吸った。
「大人は子供を指導する立場にあるんだ。間違っても、恋愛感情を持ち込んじゃいけない。そもそも、ここは学校じゃなくて塾。勉強を第一に考える場所なんだ。わかったかな、七尾さん」
「……はい」
「それじゃあ、七尾さんは戻っていいよ。西川先生はもうちょっと話そうか」
失礼しますと言って瀬里奈が扉に向かってくる。
桃は慌てて通路奥の女子トイレに隠れる。
「……どうなってんだ」
西川が瀬里奈に手を出したと言ったところか。それを瀬里奈は塾長に報告した——いや、違う。瀬里奈は寛大な処分を懇願した。瀬里奈からではない。2人の逢瀬を目撃した人物がいるのだ。そして、瀬里奈は少なくともその気があった。
……つまり、2人は恋仲の関係であり、西川の手が出る前に2人が一緒の場面を第三者が目撃。塾長へ報告。最悪の事態を免れたとまとめるのが正しい。付き合っていないと否定したのは、塾長にバレてしまったから。
いや、——遊びだった?
「七尾に限ってそんなことはないはず……」
瀬里奈は、品行方正とまではいかないが、善悪の判断は大人同様に出来るはずだ。
少なくとも、その夏の日から七尾に対して疑惑の目を向けることになる。
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