第14話


「おはよ、桃ちゃん。気分はどお?」


「……最悪な気分だよ」

 

 桃は重い瞼を持ちあげると、隣で添い寝する瀬里奈を一瞥してから布団を這い出た。


「そこは恥じらって、良かった♡って言うトコなんだけど」


「私がいま、どういう状況に置かれているのか分かってて言ってるのか?」


「勿論。最悪な女のムーブしてるね」


「それは……」


 オマエだろと言いかけて、桃は息だけを吐く。


 どの口が言っているんだ。


 親友の好きな人と一晩を共にしている。


 しかも、彼氏持ち。2重の意味で寝取りのようなことを犯す、閻魔大王も腰を抜かす大罪だろう。


「ふふっ、やっぱり、綺麗な子を汚すのは楽しいし、気持ちいいや」


「オマエはあの時から、何1つとして変わらないんだな」


「ううん。桃ちゃんはきっと、あの時のことを中2の夏を指してるんだろうけど、それは違うかな」


 瀬里奈は勢い良く飛び起きたと思ったら、桃をベッドへ強引に引き戻した。


「うわぁ!――っんん!!!」


 驚きもつかの間、瀬里奈は桃の首筋をすうっと舌で味わっていく。


「私はこの世に生まれてから、1つも変わっていないんだあ」


 抵抗する桃を、瀬里奈は羽交い絞めにし、動けなくする。


「そういえば、せんせーに学校休むって連絡しておいたから」


「ちょっと——ンぅ、……どうして」


「そりゃあ、桃ちゃんを遊び倒すいじめるのに、ひと晩じゃ足りないもん♡」


 瀬里奈は、顔を背ける桃と濃厚な口づけを一方的に交わす。




 結局、桃と瀬里奈はその日の学校を休むことになった。



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