霊士(Aura X Travelers)

第30話

「勝った！」誰が最初に声をあげたのか分からない。

倒れている搬山猿を見て、彼らはついに金級を倒したことに気づいた。

歓声が上がり、多くの人が緊張した身体を緩め、その場に座り込んでしまった。

霍夜は地面に大の字になって、青白い空を見上げた。先ほどの経験を思い出し、自然と笑顔がこぼれる。皆で搬山猿を倒したものの、この経験が彼にとって強者への一歩を進めたと感じた。

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近くの特基は呆然としており、つい独り言で「本当か、この子たちがやり遂げたのか……」と呟いた。

正直、銀級が金級に対処することには非常に懐疑的だった。

彼は搬山猿が何発殴られるか考えていたが、試験生たちの力はそれぞれ非常に変態的で、特に雷諾は怪物のようだった。彼自身の銀級とは比べ物にならない。

彼は自分が夢を見ているのかもしれないと思い、自分の頬を叩いて事実を確認した。

その様子を瑟德拉を下山させて戻ってきた佛克東が目撃した。

特基の行動を見て、佛克東は一瞬困惑し、「特基……あなた……ばかになったの……？」と尋ねた。

佛克東に言われて、特基は我に返り、「何が馬鹿になった？お前が馬鹿になったんだ！自分であそこを見ろ！」と言いながら、戦場を指差し、佛克東に見るように促した。

その時、佛克東は戦場の状況に気づき、非常に驚いた。「勝ったんだ！行って帰ってきた間に、彼らは搬山猿を倒したんだ！」

佛克東の驚いた表情を見て、特基も少し安心した。自分だけが見識が浅いわけではない。みんなが銀級が金級に勝つのは難しいと思っていた。

その後、真剣な表情で状況を分析し、「僕の見立てでは、彼らが勝ったのは、主にあの数人の銀級のおかげだ。あの銀級の実力は、過去にはあまり見られなかったもので、こんなにたくさん現れるとは思わなかった。特にあの雷諾は、冷静な判断力、反応速度、そして霊能者の優位性を持っており、彼がさらに優れている！私の当時のパフォーマンスをはるかに上回っている！」

佛克東は特基の分析に納得しつつも、最後の部分はどうかと思い、「彼らの実力は、あなたを何倍も凌ぐものだと思うよ」と心の中で呟いた。

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戦場では、霊門のスタッフが負傷者たちに応急処置を施していた。

観戦していた試験生たちも、心の中で感慨深いものがあった。

彼らの実力は、これらの試験生と大差なかったが、だからこそ、彼らが金級を倒した瞬間、心の中で五味雑然としていた。

熱血の戦いや、負傷者たちを見て、彼らも参加したいと思わずにはいられなかったが、心の中の恐怖により、彼らはただ見ているだけだった。

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休憩を終えた雷諾は、既に搬山猿の死体のそばに立っていた。古銅や隆貝など、他のメンバーも雷諾と一緒に戦後の分配について話し合うために、ここで待っていた。

数十メートルの巨大な死体を見て、雷諾は一時的に考えが浮かばなかった。「まずは腹を切って中身を見てみよう！」

「わかりました！」隆貝は重剣を振り下ろした。

刃が切り込む音がし、搬山猿のお腹には重剣による切れ目ができた。胃の消化臭が立ち込め、隆貝は「くさい！」と叫んだ。

古銅はその匂いを気にせず、霊力で手を守り、搬山猿の胃の中身を取り出した。

ねばねばした固体と液体が混ざったものが地面に投げ出され、骨やオレンジ色の液体、消化されかけた野生動物の死体が見えるようになった。

それではないようだと、搬山猿の死体のさらに奥へと探しに行き、ついに銀級獣核よりも2倍以上大きな金級獣核を見つける。白灰色の光が眩しいほどに輝いている。これが彼らの今回の努力の結果だ。

各チームの代表が集まって話し合い、圧倒的な票数で、最終的には雷諾が獣核を保管することになった。

死体については、彼らが力を出して倒したものだが、ルール上、これらの野生動物の素材は霊門に属する。ただし、後に相応の報酬が与えられる。

彼らが話し合っている間、霍夜は好奇心で搬山猿の死体のそばに来て、つついてみたり触ってみたりしていた。

「ちゃんと調べる時間がなかったけど、毛はやっぱり小白の方が触り心地がいいな！やっぱりペットは小白みたいなのがいい！自分がいつ金級になれるかな？」と、霍夜は、このしっかりした肉体を見て、自分も金級になってこんなに強くなれるかもしれないと夢見ていた。

そんな感じで、ポイントも十分に溜まったことだろうと、一群の受験生は一緒に山を降りることになった。通りすがりのチームが横目で見て、何が起こったのか知りたそうだった。

「やっと出られた！」山を出た霍夜は大きく背伸びをして叫んだ。莫古德は、スタッフに今回のポイントを話し合いに行った。

何もない霍夜は、周りを見回して草津が近くにいるのに気づいた。「おい、草津！」

その時の草津は、包帯で巻かれたまま地面に横たわって目を閉じて休んでいたが、自分に近づいてくる人がいるのに気づいた。

誰が近づいているのか目を開けて確認しようと思ったが、霍夜の馴染みのある声を聞いて、今の状態を維持して休み続けることにした。

しかし、霍夜は気にせず、しゃがんで反応のない草津に近づいて、「寝てるのか？」と言いながら指で草津をつついて、本当に寝ているのか確認しようとした。

草津は最初、我慢して彼を無視しようと思ったが、霍夜が傷に触れるのに耐えきれず、最後には目を開けてイライラして、「もういいよ！起きる！もうつつかないで！」と言った。

草津がやっと起きたのを見て、霍夜は得意げな笑顔を浮かべて、「草津、聞いてくれ！試験に合格したんだ！しかも金級を倒したんだよ！」と言った。

草津は霍夜のにっこりとした表情を見て、この馬鹿は嘘をつかないだろうと思い、自分もそんないいことがないのが残念だと思った。

山での出来事を話し合った後、草津は話題を止め、「もういいよ。少し眠いんだ。ちょっと寝させて。」

霍夜は主に草津に自分の面白い話を共有したかっただけで、目的が達成されたので草津に執着しなくなり、莫古德を探しに行った。

あの男を追い払ったことに安堵した草津は、大きなあくびをして、目を閉じてまた休むことにした。

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莫古德は獣核を提出し、霍夜を見つけ、「弟よ、俺はすでに得点の方を解決した。楓楠の兄ちゃんに会いに行こう！」と言った。

「おお、いいよ！」莫古德の言葉で、霍夜は楓南のことを思い出した。彼は金級に勝った喜びに浸っていて、チームメイトの存在をすっかり忘れていた。

ふたりが歩いていると、楓南が彼らに近づいてくるのが見えた。

楓南の傷は手当てされ、もう大丈夫だった。彼は霍夜が山を下りるのを見ていたが、結果を聞くのを我慢していた。

ふたりが近づいてくるのを見て、楓南は何食わぬ顔で、扇子を振りながら、「お前たち二人、なぜ山を下りてきた？試験の結果はどうだった？」と尋ねた。

「楓南兄さん、弟を褒めてください！今回の昇級は弟のおかげで、俺はただ見ていただけだった」と莫古德が楓南に経緯を話す。

話を聞いて、楓南は驚愕した。自分が撤退した後、こんなことが起こるとは思わなかった。

一方で、自分が昇級できることに心から喜んでいたが、表面上は冷静を保って、「お前たちを甘く見ていたようだね」と言った。

霍夜は二枚の霊符を取り出し、楓南に渡した。「これら二つは使わなかったから、返すよ！」

楓南は試験に合格したので、これら二枚の霊符も必要なかった。「お前たちが持っておけ。昇級のご褒美として。」

「ありがとう！」霍夜は気取らない人で、誰かが自分に物を渡そうとしたら、喜んで受け取った。ついでに莫古德にも一枚渡した。「莫古德さん、これを持っておいて。結局、最初にくれたのはあなただから。」

莫古德は最初は断ろうと思ったが、霍夜の言葉に従って受け取った。

そうして三人は休憩についた。試験には合格したものの、谷冬はすべての受験生が山を下りるのを待ってから、彼らを解放すると言った。

逃げようとすると、木に縛られた受験生が周囲にいて、彼らは警告の例とされていた。皆は黙って待つしかなく、どんな試練が次に待っているのかわからなかった。