第27話 趣味と友人

私好みの音楽をとても良いスピーカーで流してくれるログハウスのレストランがある。

私はたまに出かける、ハンバーグが美味しい店だが私はローストビーフが好きだ。

音響の仕事の打ち上げなどで食べに行ったりする。


そしてそこのマスターはドラマーだったので話が合って行きつけとなった。

珍しく田舎に来て出来た友人である。

そして、バンドを組んで近くのライブハウスに出演しよう、そんな話になった。

落ちぶれた私がバンドなんかやっていいのだろうか?

悩んだが、貴重な地域の友人なので、参加することにした。


オークションで買った、リハビリ用のエレキギターが役に立つ事になった。

何十年ぶりにバンドをやることになったが指や感覚が全くついていけない。

しまった、もっとリハビリしておけばよかった、後悔先に立たずだ。

やる曲はレッド・ツェッぺリンの数曲となった。

ドラマーのマスターはいとも簡単に叩いてしまう。

音楽業界で生きてきた私のプライドもあるので、その日から猛特訓が始まった。


昔は耳コピーと言って、何回も聞きながらどう弾いているのかを研究し弾けるようになるまで相当苦労した。

しかし今はネットの動画が見れるようになり、コピーも随分と楽になった。

私は落ちぶれて仕事の無い事を良い事に朝から晩まで必死に練習した。

もし、これくらい若い時に練習していたら、プレイヤーになれたかもしれない。

それほど根性無しの私が頑張った。


結果、それなりに弾いたが、あくまでアマチュアバンドなのでなんとか無難に切り抜けた。

「いやー、なかなか練習する時間が無くて………」そう言ったのは真っ赤なウソである。

なんとか無難にこなしたので、それからもちょくちょく誘いがあった。

そして、ライブハウスのマスターとも仲良くなり、たまに顔を出して一杯飲んでいる。


音楽も仕事にときは辛かったが、趣味になると楽しい。

何事も仕事となると大変だ。

特に好きな事を仕事にすると、愚痴を言ったり逃げたり出来なくなる。

これもなかなかつらい、そんな事が積み重なって落ちぶれようと思ったのかもしれない。


今は、趣味として音楽をやり同じ趣味の友人と一杯飲む、これは楽しい。

田舎の暮らしで唯一肩の力を抜いて楽しめる時間が出来たことに感謝している。

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