第26話 オークションの甘い罠
車をオークションで買った事から、その後もよくオークションを見ている。
町からイベントの音響なども頼まれるので、ちょくちょく音響機材を買っている。
そうすると、全く仕事とは関係なく、楽しみでオークションに参加してしまう事がある。
昔欲しかったエレキギターが、安かったのでつい衝動買いしてしまった。
こうなるとまずい、こんな山奥にいて物欲とはかけ離れたはずなのに、書斎のパソコンから全国の商品がネットで買えてしまうのだ。
このままこんなことをやっていたらとんでもないことになってしまう。
そこで、仕事に使う物以外は決して買ってはならないという規則を作った。
「落ちぶれているくせに物欲を出すとは何事だ!」
それでもやっぱりたまに見てしまう、どうしても欲しくなったら年に一度だけ誕生日のプレゼントとして買うことにした。
そして、買える可能性が1%でもあるとオークションは俄然楽しくなる。
今は来年のプレゼントまですでに受け取ってしまっている。
いかん、こんなことでは老後は不安になるばかりだ。
蓄えもないのに物を買うなど有ってはならない事なのだ。
また、家が広いので余裕で物が置けてしまう。
これも気が緩む原因となっているのだ。
そして、規則を改正した、今より節約になったり、利益を上げられるなら買ってもよいということにした。
ある日原付バイクが出ていた、安いし出品者の場所が近くなので取りに行ける。
原付のバイクがあれば燃料費が車より安くなる、そう思ってオークションに参加した。
もうすぐバイクが手に入るそう思った終了の五分前に高値で更新された。
夢は終わった、もう私の出せる金額では無くなったのだ。
がっかりしたが、よく落ち着いて考えてみると、夜の帰り道で動物に合って転倒したりしたら、大変な事になる。
少しのガソリン代の節約のつもりで大きな治療費の出費となれば大損害だ。
危険は出来るだけ回避しなければならない。
夢から覚めた私は、「良かった落札出来なくて」そう言いながら焼酎を一杯飲んだ。
衝動買いしたエレキギターはコツコツと練習をしている。
細かく指を動かすのはどうやら体と脳に良いらしい、そんなわけでリハビリの道具として役に立っていると思うことにした。
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