第24話  治外法権

町中から車で約三十分程山に登った標高五百五十メートルにある集落に住み始めてしばらくたった。

高さがピンと来ないと思うが、スカイツリーの一番上の細い所の中ほどにある集落だ。


東京とは当然様々な事が違うが、特に思うのは治外法権である事だと思う。

この集落にしか通用しない決まりごとが沢山存在することだ。

まずびっくりするのは、この地域は湧水が豊富なので水の奪い合いが無い。

水の少ない所では、水のために様々な争いがあり、今でも仲が悪い所などがあるらしい。

しかも水道代はタダだ、しかし設備維持の費用が月に千円である。

そして年に一度はタンクの掃除に出なければならない、これはかなりしんどい。

中の砂をバケツで出して新しい砂を運び入れ替える。

大きなコンクリートの水槽で集落の人総出で頑張る。


そして、終了するとそのあとの「なおらい」と言う物がある。

いわゆる打ち上げの飲み会だ、これが最も大変だ。

何せ、飲むのは日本酒でどんどん進められる、新入りはついで回らないといけないうえにご返杯で飲まなければならない。

とにかく断りにくいので、日本酒をたくさん飲む。

これは相当きつい、ふだん焼酎を割って一杯だけしか飲まないので、当然酒には強くない。


自宅に帰ると、肉体労働で疲れているのに二日酔いが追い打ちをかける。

集会場まで軽トラで行って、「今日は車なので、」そう言うと、「ここは治外法権だから飲んでもいいんだ」そう言われてやっぱり飲まされる。

ほぼ月に一度は行事があるので、月に一度は二日酔いなのだ。

また、集落のトップは色んな意味で権力が高い、なので新入りは特に気をつけないといけないし逆らうことは決して許されない。


何かを頼まれれば、「はい喜んで」というような状況なのだ。

ただ、役場の人に地域の生活に慣れていないので小言を言われていたら、地域のボスが

「いいんだよ、ここはここなりのやり方があるんだから」そう言って助けてくれた。


さすが治外法権。

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