第6話 食事や家事の重要性が身にしみる


食事は重要だが、これはなかなか難しい。糖尿病予備軍の私には、切実な問題なのだ。

これまでは夕方のスーパーに出かけ、半額になった弁当を買って食べていた。

しかし今後の健康を考えると、これではいけない医療費が大変になるのは目に見えている。

全ては食事からだと思って自炊をやってみることにする。


まずは書斎に料理関係の本を買い込み、色々と勉強だ。

低糖質で体に優しく美味しい、そんな食事を目指すことにした。

これは簡単には行かない、努力が相当必要だ。

そしてさらに経済的でなくてはならない。


まず自宅からスーパーまでは、車で30分ほどかかるので毎日行くのは難しい。

そこで買い置きをすることにする。

野菜はキャベツや玉ねぎなど日持ちするものを中心に買い、肉や魚等は半額の物をまとめて買って解凍して使うことにした。

そのため閉店の約一時間前あたりを狙ってスーパーへ行く。

また低糖質を考え、コメはできるだけ食べず豆腐を主食にしてみる。

そしてささやかな楽しみとして、お酒を一杯だけ飲むことにした。

やり始めると、冷凍食品の有利さを強く感じた。

しかし持っている冷蔵庫では冷凍室があきらかに小さい。


そんな時リサイクルショップで冷凍ストッカーなるものを発見する。

「これだ!」そう思った私はストッカーを購入し、肉や魚などは半額やセールで買い込み保存した。

出来るだけ格安で美味しく効率的にと考えた。

何せ落ちぶれている身分なので必死だ。


洗濯も部屋が広いので乾燥機までリサイクルショップで購入して効率よくしてみる。こんなに自由な時間があるにも関わらず。


掃除はもっと難しい。

どうも私は掃除が苦手らしく、すぐにホコリが貯まってしまう。

お掃除ロボットを買う余裕はないし、仕方ないのでハンディの掃除機で自分の周りだけでも掃除することにする。


「まあいいさ、誰も見ていないし誰も来ないのだ」


そのうちに良い掃除機でも買おう、そう思って気持をなぐさめた。

もし結婚して奥さんがいたら、家事などはやってもらえるのかもしれない、しかしそうであれば落ちぶれる事は絶対に許されないだろう、そう思うと複雑な気分だ。


私は随分前に結婚生活をリタイヤした、つまり結婚生活不適合者として烙印を押されたのだ。


そして、この自由という恐ろしい地獄へと落ちてきたのだ。

私はどうやら、どんどん落ちて行っているらしい、そんな感覚がひしひしとしている。お金もどんどんなくなっていく。


泥沼はもうそこに迫ってきている、沈んでいくのは時間の問題だ。そんな予感がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る