第4話
結と別れた洸は帰宅の途中にある公園のベンチに座っていた。
公園にしてはかなり立派造りをしており、遊具が複数あり近くには小さな池まであった。
そこでは小学生くらいの子供達が元気な声を響かせ、走りまわっており、側には子供達の母親らしき人たちが井戸端会議を開催していた。
(結、かなり変わってたな)
出会ったばかりの時はあまり笑わなかった結が、少しずつ笑うようになった頃に引っ越し。
目の前で遊んでいる子供達程笑い合ってた訳ではないが、自分達にも同じ様な時代があったなと、思い出を重ね合わせてしまう。
楽しかった頃の思い出が心を少し暖かな気持ちにするも、先程の彼女への余りにも素っ気ない態度を取ってしまった事への罪悪感が消えず、一人で思考を巡らせていた。
結との思い出は小学生の頃の約2年半程度と大して長くはない期間。
小学校という初めて多くの人達との関係を築く社会の中での記憶は、自我を形成する一端を担う程の影響力があり、それが楽しかったと思える環境では尚更思い深いものとして心に刻まれている。
それは、まだ15年しか生きていない洸には十分長いと思える期間であり、彼女との思い出を美化させる程に心地良い期間でもあった。
けれど人生は楽しいばかりではないのが現実で、暗く影を堕とす期間も存在する。
心地良かった思い出と暗い記憶が入り混じっり、いろんな感情がせめぎあって言葉にもならない息が溢れる。
(本当に最低だな)
自らの行動を卑下し、思考を振り払いベンチから立ち上がると、再び帰宅に向け歩み始めた。
ボチャン!
何かが水に飛び込む様な音がした後に、背後から悲鳴の様な叫び声が聞こえた。
凄く嫌な感じがした洸は一目散に池に走り出した。
先程遊び回っていた子供達の一人が池に落下しており、他の子供達は大騒ぎをしていた。
いち早く気が付いた洸は、脇目も振らず池に飛び込み落下してしまった子供を抱き上げた。
幸いにして池は然程深くはなかったものの、小さい子供達だけでは最悪の事態になっていたかもしれない。
無事救出した所で、騒ぎを聞きつけた親たちが一斉に集まってきた。
池に落ちてしまった子供は全身ずぶ濡れ状態で母親に抱きつきながら号泣している。
「息子を助けて頂き本当にありがとうございました。どうお礼をしたらいいか・・・・・・」
「別にお礼とかはいいです。ただ、ちゃんと子供達を見ていて下さい。・・・・・・人間なんて簡単に溺れてしまうんですから」
泣いてる子供を大切に抱きしめてお礼を告げる母親に、八つ当たり気味に強めの注意を述べて、洸は今度こそ自宅に帰宅した。
(今日は色々ありすぎて疲れた)
帰宅後、池で汚れた制服の洗濯とシャワーを浴び終えるとベットに倒れ込むように横たわり、程なくして意識を手放した。
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