第2話
高校1年生の春。
洸はある理由から高校入学と同時に地元を離れ一人暮らしをしている。
入学から2ヶ月程が経つも未だに友達といえる人は殆どなく、自ら作ろうともしなかった為にクラスメイトの名前すら覚える気がすらない。
毎日一人で登校し授業が終われば一人で帰宅を繰り返す日々。
そんな日々を過ごす洸は、いつもの様に左腕を枕代わりにしながら、真面目とは程遠い格好で授業を受けていた。
(早く終わんねぇかな)
授業に退屈を感じつつ、同じ姿勢で辛くなった体制を変えようと体を捻ると、腕に当たった消しゴムがポトリと床に落ちる。
はぁ、と小さなため息をこぼしながら机から落ちた消しゴムを拾おうとすると、誰かと手がぶつかる。
視線をあげると、垂れ下がる黒髪の隙間から綺麗な琥珀色の瞳の女子生徒と視線が交わり、手が止まる。
「・・・・・・!」
普段から授業中も突っ伏している体制が多く、休憩時間は周りから話掛けられない様に机に突っ伏している。
とは言っても、こんなに近くに知り合いがいた事と、気が付かなかった事に驚き手が止まる。
「どうぞ」と言いながら落ちた消しゴムを拾い上げ、洸の止まったままの手に乗せてくれた。
彼女は少し口角を上げ一瞥すると、正面に向き直し授業内容をノートに記載し始めた。
離れ離れになってから、約3年半も経てば見た目も変わるだろう。
あの時の幼さが薄れた端麗な顔立ちに、服の上からでも分かるほっそりとした中に女性らいしい凹凸のある体つき。全体的にかなり綺麗に成長していて、遠目では気が付かなかったかも知れない。
けれど間近に見た昔と変わらない綺麗な琥珀色の瞳に、少し口角を上げた時の笑顔で彼女は暁月結だと確信した。
(何で今まで気が付かなかったんだ・・・)
溜め息混じりに内心呟き、洸も体制を戻すも授業には集中出来ず、頭を抱える様に考え込んでしまった。
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