分岐◆『わたしの首輪』編

(4)いけない私の性癖

「可愛いでしょ~♥️ 紅いの、すごく私に似合うと思わない?」


「えっ? おっしゃってる意味が分かりません。これって、犬の首輪ですよね」


 もっともなことを千堂くんが言う。


「そうよ……。私が周りにキツくあたって人を寄せ付けないのは、いいご主人様が居ないから」


 そこから、千堂くん──いえ、ご主人様に見込んだ方に私の性癖を教えこんだ。


「誰も彼も、私をハンティングトロフィーか何かと思ってる」

「はい」


「私の姿ばかりに目を奪われて、本質には目を向けない」

「はい」


「私の手綱を取れる人がいないの。私が手綱を預けるに足る人格者を待っていたのよ」

「ええっと、それが僕だと?」


「そうよ。あなたの私を射貫いぬくような視線がたまらなかった」

「そんなに見つめていましたか。それより、盗み見ていたのを分かってらしたんですね?」


「そうよ。いつ、あなたが告白するのか待って待って、待ちくたびれたわ」

「そんな……。僕、告白なんてする気はなくて、ずっと先輩を──」


「桃華」

「──あ、も、桃華……先輩を見ていられたらそれで良かったんです。でも……」


 あなたに困惑が見える……。そうでしょう。でもね、その憧憬しょうけいの眼差しが私にはたまらないのよ。


「あなたは、バツゲームか何かで告白させられたようだけど……。私は感謝するわ、その人に──」

「…………」


「さあ……あなたの手で私──いやしいメス犬に……はぁ、首輪を……着けて……はぁ……」


 私は、彼の手に首輪を握らせる。その前にひざまずき首輪を着けてくれる、いえ、着けてくださるのを待つ。


 おそらく、いえ絶対トロけた顔を、他人には見せられない表情をしている。


「でも……僕……せん──桃華……先輩に、そんなこと……できません」

「……そう。残念よ。あなたなら私を大切にしてくれると思ったのに……」


 まだ、踏み込んでこれない、のね?


「他の人なら、あなたじゃないなら私……どんなこと、されるんでしょうね~? きっと人に話せないことをされ、させられ……深夜の散歩、もちろん全裸でさせられる散歩。ハメ[ピーー]とか撮られネットに上げられ一生消えない傷をのこす。……きっと身体にも消えない傷あとを付けられ、見知らぬ男たちになぶられ、身体に〝正〟の字をいっぱい書かれるのだわ……。でも、それも楽しい、かも知れない。私の奥底がそれを望んでいる……のだから」

「でも……そんな……」


 これでもダメなの? 私をぎょせる人、飼い主はあなたの他には居ないというのに……。


「私のご主人様になれないなら、帰りなさい。私のことは忘れるのよ……」

「…………」

「さあ! 首輪を置いて帰りなさい!」


 私の怒声にビクっと震えた彼は首輪を握りしめ直す。その手がゆっくりと首輪をほどく。


「ありがとう、ありがとうございます、ご主人様」

「これでいいんですか? これから僕、何をすれば?……」


 あなたは、私に首輪を着けた。優しく、指一本も触れるのをいとうように……。


「そうねぇ……取りあえず『犬に服は必要ない』かな?」

「はあぁ~……。犬に、服は、必要、ない……」

「はい、ご主人様」


 私は制服を脱いで投げ捨てる。彼はそれを拾ってはたたみテーブルに置く。そう言うところが素敵な私のご主人様♥️



    〔完〕

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【完結】孤高の少女の胸の内 ~秘められし彼女の偏愛~ *延長線 ペロりねった @Peti_asNNK

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