(3)贈り物


「僕たちは帰るけど……まだ残るのかい?」


 上原副会長が桃華先輩に問う。


「ええ、私は千堂くんに教え込まないといけないことがあるから」


「分かったよ」


「会長、お手柔らかにお願いしますよ。また、辞められると困りますから……」


 会計の大葉先輩が注意してくれる。


「そうですよ。千堂くん、会長が無茶を言っても聞かなくて良いですからね」


 書記・春日井先輩も援護してくれる。


「は、はあ」


「ダメよ。最初が肝心なんだから」


「いえ、そこで皆、挫折ざせつしてしまうんです。自重してくださいよ」


「じゃあね」


「あと、お願いします。さようなら」


「さようなら~」


「お疲れ様でした。上原先輩、大葉先輩、春日井先輩」



 皆、帰ってしまった……。


 これから先輩と二人きり……。


 否応なしに緊張が高まる。


「千堂くん」


「ひゃ、ひゃい!」


「こちらへ……」


 桃華先輩は、スクールバッグから四角い箱を取り出していた。


「それは?」


「約束どおり生徒会に来てくれたお礼よ」


「はあ……ありがとうございます?」


「そうそう」と言って桃華先輩は、ドアへ行き内鍵をかける。


 僕は、渡された箱を見る。


 黒い飾りけの無い一辺一五センチくらいの四角い箱だ。重くもなく、深さも無い。


 長い間、使われたように中央がへこみ、角が擦れてはけげ地肌が見えている。


 でも、なにか重厚なものを感じる。


「さあ、開けて」と桃華先輩がほほ笑んで勧める。


「は、はい」


 長テーブルに置いておもむろに箱を開ける。


 僕はフタを持ったまま、固まった。


「これは?」


 中には、紅い首輪が入っていた……。


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