エピローグ 霧の向こうへ

 リンランを守るため、少女のオンダの投げたやりの先がティボーの顔にあたり、仮面が取れた。


 つぎはぎだらけのティボーはリンランに近づき、大槍をふりあげた。

 オンダはバネのように立ちあがり、リンランを抱きしめる。

 背中に一閃を受けた。


「う」


 リンランを抱きしめたまま、丘の斜面を転がり落ちる。

 オンダの意識は遠のいていった。



 

 背中の激しい痛みに目を覚ましたら、霧のかかった暗い森の中のいた。

 かぼそい身体からだのリンランにおぶられている。ぜいぜいと苦しそうに息をしていた。


「怖かったよぉ。死んじゃヤダよぉ」


 リンランの前半身にしがみつくガブリエルくんが、情けなくつぶやいている。


「……殿下?」

「この先に街があるはずだ。手当てしてもらおう」

「あいつは?」

「丘の下の森に隠れていたら、行ってしまったよ。霧も出て好都合だった」

「……ねえ、なんでさっきあいつに水をかけたの? 弱いくせに。今もおんぶなんかして。それにあんた、まさか王子じゃなくて……」

「どうでもいいだろ。私はきみの命の恩人で、きみも私の命の恩人というだけだ」

「……はん」

「黙ってしっかりつかまっていて」

「ああ」


 最強以外許せなかったオンダは、弱っちいリンランにしがみつく。

 リンランはオンダをおぶり、霧がかった森の奥に吸い込まれていった。

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リンランの旅戦記 〜幻精の最弱男装姫君は、水精の最強女騎士と東方を目指す〜 Meg @MegMiki34

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