第2話 死後の世界?

 闇が切り開かれ、眼前に広がった世界。田中は息を飲んでいた。


なぜなら、自分を取り囲む緑色の集団が、明らかに人間ではなかったからである。

深い緑の体皮、尖った耳。頭は全員がスキンヘッド。それ以外はとくに普通の人間と変わることはないが、もれなく皆、服装は腰布一枚。まるで原始人のようだ。

まぁ、こちらもまわし一枚にほか全裸という格好なので、むしろ親近感が湧くくらいだが。


それに、ここは一体どこなのだろうか。

さっきの謎の空間から開放されたはいいが、明らかに元いた群馬の山奥ではない。

村…?なのか。

自分と、この緑色の集団がいるここの広場を囲むように、蜂蜜色の石造りの家々が建ち並んでおり、小さな畑、井戸など、およそ村を村たらしめる要素が散見される。


だが、明らかに群馬ではないし、日本だとも思えない。まるで映画のセットに迷い込んだかのような気分である。

もしかして、ここが、かの有名なUSJというところだろうか。噂には聞いたことがある。

たしか、大阪という大都市にあるらしいが。関西の人間が緑色の変態だとは聞いたことがない。


先刻までの謎の闇の空間。からの、緑色の村人たち。

ここが死後の世界だというのなら、あまりにも珍妙すぎる。考えても仕方ない。

とりあえず流れに身を任せるしかないだろう。


何やら彼らが話あっている。


リーダーのような風格を持った緑男

「何?もう一度説明しろ!」


小柄な緑男

「いや、だからボス。本当です。本当に何もないところから突然現れたんですよ。」


中くらいの緑男

「こいつの言ってることは本当です。馬小屋の近くを見張っていたら、突然この変態が光とともに現れて、目をつむったまま、ドシン、ドシンと、地鳴らしを起こしはじめたんです。」


小柄な緑男

「それでおれたち十数人がかりでやっと抑えつけて、ひっ囚えました。ほら、そんときのたんこぶがここ。」


こちらもだが、どうやら相手方もおおいに困惑している様子。言葉が違うようで何を言っているのか分からないが、そのように見受けられる。

とりあえず敵意がないことを示そう。


立ち上がるため、手縄と足縄に力を加え引きちぎり、リーダーと思われるひとりへと歩みを進めていく。


「やべぇ!あいつ縄を自力で解きやがった。」


「うわああ!だから井戸に沈めとけっつったろ!」


臨戦態勢に入る緑の集団。構わず歩を進めていく。

石斧を構える前の数人を素通りしていき、リーダーらしき男の目の前まで来ると、握手を求めるため、手を差し伸べた。


「群馬で力士やってる、田中益荒男っす!」


息を呑む取り巻きたち。


「え、え?…お、おう?よろしく…?」


おそるおそる手を握り返すリーダー。


益荒男&リーダーゴブリン

(何言ってんのかぜんぜんわかんねぇ…)


ぎこちなく誓われた握手。

不思議な沈黙が、あたりを包んだ。


        

                 

                  つづく


       次回、第三話「3年C組、田中」














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