はっけよい異世界〜剣と魔法とまわしとちゃんこ〜

二山 粥

第1話 リキシインザダーク

 ドスン、ドスン…。


ここは一体何なのだろう…。

一寸先も見えない暗闇の中、小一時間ほど四股を踏み続ける田中益荒男は、今の謎の現状を理解に苦しんでいた。


確か自分は少し前、死んだはずだ。

修行でヒグマに相撲を挑み、もう少しというところで、通りすがりの猟師の鉛玉を頭に受け、命を落としたのだ。多分普通に熊と間違われたんだと思う。

あと少しで勝てたのだが、悔しいな。


そんなこんなで気がついたらこの謎の空間にいた。

光が一切遮断された空間らしいが、息苦しさは感じない。息をしているのかさえも、分からない。


ドスン、ドスン…。


混乱した心を落ち着かせるため、先ほどから四股を踏んでいるのだが、一体いつまでこうしていればいいのだ。

もしかして、いや、もしかしなくても、ここがあの世、つまり死後の世界なのか。

ということは、永遠にこのまま暗闇に取り残されたまま、四股を踏み続けなくてはならないのか。


もう、ちゃんこも食べられないし、ヒグマとのリベンジマッチも果たせない。

一体自分の人生とは何だったのだろうか。

すべてを相撲に捧げた人生だった。

それが、最期は相撲で華やかに散るのではなく、猟友会のおじさんのライフルで幕を閉じるとは。


ドスン、ドスン…


まだだ、まだ終わるべきではない。


ドスン、ドスン…


まだ、相撲がしたい!


ドスン!


空中高く挙げた右足が弧を描き、地面を踏み締めたとき、益荒男の思いが届いたかのように、眼前の闇が切り開かれた。


闇の空間に流れ込む光が中和していき、世界を彩り始める。

眩さに目を細める益荒男。


目を開くと、そこには新しい世界が広がっていた!


                   


                  つづく


        次回、第2話「死後の世界?」

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