第25話 ドラゴンクッキングのお時間です(前編)

 魔法で作り出したのか、五人全員がコック棒を被り、真っ白なコックコートを身に纏っている。ユーサンは嫌がっていたが、モカが「似合っているよ、ユーサン!」というと、顔を赤らめて、そのまま着ていた。


 ※ ここから先、ほとんど会話のみでお届けいたします。どのセリフが誰のものなのか、できるだけ書かなくてもわかるようにしてみたつもりですが、「このセリフは誰なの?」「わかりにくいんだけど」等あれば、コメント欄でお知らせください。



「さーて、始まりました! ドラゴンクッキング! 司会のレンダでーっす!」

「ちょっと、なにあんたが仕切ってんのよ! レンダ!」


「何よ、じゃあスリムゥがやってみなよ。はい、あとは任せるから」

「えっ、ちょっ……カ、カメラはこっち? え、カメラなんてない? 聞いてないしそんなの! もう、レンダ代わって!」


「はいはい、やっぱりスリムゥはアドリブに弱いんだから……じゃ、始めていきまーす。さーて、今日の食材は何かな、リーンさん?」

「はいはぁい、今日はこれ! ブラックドラゴンの尻尾を使った料理を行なっていきたいと思いますぅ。ブラックドラゴンの尻尾って、超貴重な食材……食材なの、これ? まぁいいわ。とっても重くて、美味しいかどうかもわからないんだけどぉ、みんなでがんばって料理しましょう!」


「リーンさん、ありがとうございました! では早速調理に入っていきますね。まずは調理台が必要ですねー。じゃあ、モカさーん! 魔法で調理台を作ってくださいー」

「ええ、任せて。私が学園からお借りしている召喚獣がちょうど土属性のゴーレムだから、魔法で岩を作り出し、その岩を重ねることで調理に最適な台を作り――」


「硬い硬い硬い硬い! もっとこう、物腰柔らかく! こんなときまで真面目にする必要ないんだから!」

「で、でもマチョダさんに一刻も早くお肉を届けたくて……」

「だからみんなで力を合わせて調理するんでしょ! はい、パパッと台を作り出すの!」



「なんだか今日のレンダ、気合入ってんなぁ。なあ、リーン」

「ふふふ、普段あんまり活躍する場がないから、張り切ってんじゃない?」



「……ふう……レンダ。調理台できました!」

「おっ、やればできるじゃん! どれどれ……。うげ……モカ! もっと簡単なものでよかったのに……何この完成度」

「スリムゥも見てみなよぉ」


「……げっ、何だこの大理石のキッチン。ちょちょっと作ってこれかよ、かぁーっ! これだから天才魔法使いはよぉ!」


「……未来の我が妻にふさわしい出来栄えだな……」

「なんか言った? ユーサン?」

「qwせdrftgyふじこlp(*1)……なんでも……ない」


「じゃ、これから私とリーンの風魔法を使ってお肉をカットしていきまーす」

「私たちの力で竜の肉……切れるかなぁ」


「うーん、確かに触ってみた感じちょっと硬いよねぇ」


「わ、私が上から岩を落として柔らかくしてみようか! 肉を叩けば柔らかくなるって学校で習ったわ!」

「ああ、モカはいいわ。あんたがやるとミンチになっちゃいそうだから」

「……はい(涙目)」



「ユーサン、あんた殴りな」

「はぁ? なんで俺が?」


(言え、モカ! とスリムゥがモカに耳打ちをする)


「ユーサンが叩くところ、見てみたいなぁ」



「……見ておけ、モカ・フローティン! 俺の魂の拳を!」

「あいつ、結構バカだったんだな……卒業するまで気づかんかったわ」

「……(スリムゥは何のことを言っているのかしら)?」



 数分後



「はーい、バ……ユーサンが叩いてくれたおかげでお肉も柔らかくなりました。ユーサン、ありがとー」

「ふん! レンダに言われてもあまり嬉しくないな……」


「はいはい、ありがとねー。(棒読み)じゃ、改めて渡すとリーンでお肉をカットしていきまーす。っていうかさ、私たち魔法使いってほとんど肉食べないじゃん。どのぐらいの大きさに切ればいいのかな?」

「えーっとねぇ……持ち帰りのこととか、食べやすさを考えると……サイコロ状にすればいいんじゃない?」


「どう、モカ? マチョダはサイコロ状が食べやすい?」

「今は横になっている状態だし……それでいいと思う」


「よっし、それじゃ、シルフとウィンディ! がんばってもらうからね!」

「すご……ってかあんたたち、そんな魔法も使えるんだね」


「なによ、いつも一緒にいるのに気づかなかったのスリムゥ? 簡単な切断なら風魔法よ! ね、リーン」

「ええ。洗った髪を乾かす時も重宝するのよ」

「えらい魔法の無駄遣いだな……リーンたち」

「スリムゥだって『暑い暑い』って、夏場にフロスティで涼んでるじゃん。それと一緒」


 シュインシュイン……と風が唸りを上げる。大理石でできたキッチンの上で風魔法が踊り、竜の肉をサイコロ状にカットしていく。その様子は芸術的で、みているみんなが「おおー」と歓声をあげたのだった。


 特に大きな事件もないまま、料理は完成するのだが……後編へ続く。



(*1)パソコンのキーボードの「Q」に右手の中指、「A」に右手人差し指を置いて、キーボードを押したままそのまま右にスライドしていくと出る言葉。慌てた時なんかの表現方法として有名。

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