第007食 北海道産馬鈴薯カレーの冴えた食べ方:こうひいはうす(一九七七年)
札幌の、ひいては、日本のスープカレーの源泉である「アジャンタ」〈総本家〉の訪問後、「北海道神宮」への参拝を終えた後で、夕食前に、もう一杯くらいお腹に入るかも、と思い立った書き手が訪れたのが、中央区に位置している「こうひいはうす」である。ちなみに、この店は、「2019」「2020」「2023」には、東日本の『百名店』のカレー部門に選出されてさえいる。
そのこうひいはうすは、場所的に言うと、藻岩山のロープウェイ乗り場の近く、路面電車の停留所のほど近くに位置している。
路面電車が走っている、文字通り、「電車通り」という名の通りに面した建物の一階上部には、濃い緑地の横長の看板が掲げられていて、そこには、黄色字で「昭和五十二年創業」と「電車通りのスープカリー」、白字で「こうひいはうす」、さらに、看板の右端に、三つの赤い唐辛子〈🌶️🌶️🌶️〉の絵が在って、このアイコンの存在が、「こうひいはうす」という名称ではあるものの、この店が〈スープカレー店〉である事をピリッと強調しているように思われる。
さて、看板に書かれているように、こうひいはうすは、「昭和五十二年創業」、すなわち、昭和、平成、令和と、三つの和暦を跨いでいる分けなのだが、創業年を西暦に置き直してみると〈一九七七年〉、つまり、二〇二四年現在において既に、四十七年、およそ半世紀もの長い歴史を誇っているのだ。つまり、「アジャンタ」の次に古い歴史を持っているので、そういった理由からも、書き手は、この店を北海道二軒目の訪問店に選んだのである。
こうひいはうすは、その名称に違わず、店の内装は、木製の濃い茶色を基調とし、いかにもコーヒー店然としており、事実、コーヒー豆の販売もしているようで、メニューの中にコーヒーも認められる。
もしかしたら、こうひいはうすは、ドリンクのみを目的とする客もいるのかな、と書き手はふと思ったのだが、メニューには、注文に際しては、ドリンクだけは不可で、入店者は必ず一人一品のスープカレーの注文をするように、という指示が書かれていた。
さて、こうひいはうすのカレーは、アジャンタ系のカレーであるようで、つまり、「とりカリィ」を象徴とするアジャンタと同じように、代表的なメニューは「チキンカレー」であるらしい。
しかしながら、鶏肉を具材としたカレーを、書き手は、ほんの数時間前に、そのアジャンタで食したばかりだったので、ここでは異なる品にしよう、それでは、何にしようか、と思い悩みながら、濃いコーヒー色を背景としたメニューを眺めていた。
その焦茶色のメニューには、「チキンカレー」「あげチキンカレー」「胸肉フリッターカレー」「チキンカツカレー」など鶏肉メニューもあったのだが、チキン以外にも、「寄せとうふカレー」「ハンバーグカレー」「メンチカツカレー」などが認められた。だがしかし、書き手の興味を最も強く引き付けたのは、メニューの一番下に書かれていた「ニセコ産じゃがいもコロッケカレー」であった。
つまり、だ。
せっかく、東京から飛行機に乗って北海道にまで来ているのだから、可能ならば、具材に北海道産の食材を使った皿を頼みたい分けだ。そういった心情的理由から、書き手は、この馬鈴薯メニューを選ぶ事にしたのである。
ちなみに、こうひいはうすのカレーは、この日二食目という事もあって、黄色いライスの量は一六〇グラムの「普通」、辛さは、十段階あるうちの中間の〈五〉にした。この〈五〉というレベルは、他店の大辛に相当するそうだ。事実、提供されたカレーはかなり辛く、食事中、書き手の汗が止まらなかった事を、ここで先に述べておきたい。
さて、書き手が入店したのが四時少し前、つまり、昼食には遅く、夕食には早い、という、いかにも中途半端な時間帯であったせいか、その時間帯、客は書き手一人で、結果的に、注文した品は、然して待つことなくすぐに提供された。
メニューには、こうひいはうすのカレー・スープの特徴は、「無化調の身体にやさしいさらさらスープ」で、「たっぷりの野菜と鶏ガラ・昆布・鰹節をじっくり18時間かけて取った旨味たっぷりのスープと飴色のたまねぎ・スパイスを合わせた」と書かれていた。だがしかし、大辛を注文し、辛さによる刺激を優先させてしまったので、残念ながら、書き手には、細やかな繊細な味は分からなかった。
具材は、ゆで卵に加え、ブロッコリーや、大きめのにんじんやジャガイモが、ドカっと入っていた。このような、おでんもかくや、という大きめの具材は、どうやら、スープカレーという料理の特徴の一つであるらしい。
ところで、この丸々っと入ったジャガイモもまた、コロッケ同様にニセコ産のジャガイモを使っているのであろうか?
しかし、コロッケと違って、丸まるとした馬鈴薯の具材の産地の表記はなかったので、残念ながらそこまでは分からなかった。だとしても、馬鈴薯という同じ食材が、茹でとコロッケという二つの在り方で楽しめる点は実に興味深い。
さてさて、既に述べたように、書き手は、ライスの量は普通で、コロッケカレーを大辛で注文してしまったのは先に述べた通りなのだが、ジャガイモが具材に入った、コロッケカレーを注文して良かった、と痛感した点がある。
書き手は、辛いカレーを食べる時には、ライスの量を少し多めにする傾向がある。それは、水ではなく、ライスによって舌にこびりついた辛さを中和しよう、という意図からなのだが、この日は、お腹の減り具合もあって、ライスを大盛りで注文しなかった。だがその結果、辛さを和らげるための米が足りなくなってしまったのだ。
この時、目についたのが、皿の中の二様のジャガイモである。
かくして、食材としてのみならず、辛さ緩和の中和〈食材〉としても、書き手は、ありがたく、それらの馬鈴薯を口にした次第なのである。
〈訪問データ〉
こうひいはうす:北海道札幌市・伏見、最寄り:札幌市電、ロープウェイ入口停留所(徒歩数分)
二〇二四年四月五日金曜、十五時四十五分
ニセコ産じゃがいもコロッケカレー:九〇〇円(現金)
辛さ五、ライス普通(一六〇グラム)
〈参考資料〉
〈WEB〉二〇二四年五月十九日閲覧。
「札幌グルメの『スープカレー』ならまずはここ!おすすめの店10選!」「こうひいはうす」、『サツメシ』(二〇二一年九月三十日付)
「カレーEAST百名店2023」、『食べログ』
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