第005食 カジキカツというレア・カレー:ガルパン喫茶(茨城・大洗05)

 「大洗駅前広場」の左端には〈イルカ〉の、右端には〈カジキ〉のオブジェが立っている。

 そのカジキ像の辺りから、海に向かって走っているのが「きらめき通り」なのだが、そのまま、その道を進むと、大洗町のメルクマールである「大洗マリンタワー」にたどり着く。

 マリンタワーが聳え立っている、緑の芝生が敷き詰められた「港中央公園」前の、「サンビーチ通り」に面した入り口には、高さ七メートルの、海面から跳び上がったかのような、躍動感ある〈カジキ〉の像が置かれているのだが、このカジキは、二〇一四年八月に設置されたらしい。


 つまり、駅とマリンタワー前には、カジキ像が在る分けなのだが、何ゆえに、マグロでもカツオでもなく、〈カジキ〉なのであろうか。


 カジキといえば、代表的な大型魚で、その大きさは四メートル超、体重三〇〇キログラム・オーバー、時速一〇〇キロ以上の速度で泳ぐ個体もいて、針に掛かった時の引きは強烈であり、例えば、小説で言えば、ヘミングウェイの『老人と海』、漫画やアニメで言えば、『釣りキチ三平』の「ブルーマーリン編」、ノンフィクションでいえば、役者の松方弘樹氏の釣りドキュメンタリーに出てきている。実は、大洗沖は、メカジキやマカジキといったカジキの良漁場となっており、毎年、八月の後半には、『大洗インターナショナル ビルフィッシュ トーナメント』というカジキ釣り国際大会が催されてさえいる。


 たしかに、大洗で捕れる魚と言えばアンコウがよく知られているのだが、実は、カジキもまた大洗の魚の代表なのだ。


 さて、そのカジキ像が在る公園の奥に立っている大洗マリンタワーは、昭和最後の一九八八年の十月に開館になった、高さ六〇メートル、地上三階建てのタワーである。

 これほどの高さを誇っているのに、どうして三階建て? と訝しむ方もきっといるにちがいない。

 実は、一階のエントランスを入った後、エレベーターで二階まで上がるのだが、その二階は、第十四層、地上五〇メートルの所に位置している。ちなみに、三階の展望台は、第十五層、五十五メートルに在る。

 つまるところ、十三層までは、一階と二階を繋ぐ分厚い層になっているのだ。


 この二階には、かつて「シーガル」という名の喫茶店が入っていたのだが,二〇一一年の大震災の際に休業してしまった。しかし、二〇一五年に、その喫茶店の跡地に「ガルパン喫茶  Panzer Vor」(以下、ガルパン喫茶と略記)が開業したのだ。


 このガルパン喫茶は、二〇一二年にTVアニメが放映された、大洗町を舞台にしたアニメ作品『ガールズ&パンツァー』をモチーフにした、アニメ会社公認のカフェなのである。

 

 ここで提供されているメニューには、「大洗学食のサバ(味噌)煮定食」や「アンツィオ屋台の鉄板ナポリタン」など、物語の中に出てきた料理や、アニメに登場する学校からインスパイアされた「サンダースバーガー」などがある。また、アニメ作品それ自体とは関係性の薄いメニューもあって、それが「カジキドッグ」なのだ。というのも、書き手が知る限りにおいて、『ガルパン』には、TV版においても劇場版においても〈カジキ〉は登場していないからだ。とまれ、そんな〈カジキ〉を使ったガルパン喫茶のメニューには、なんと、「カジキカツカレー」なる品さえある。


 豚カツ、牛かつ、チキンカツなど、様々な獣肉のカツは、どこでも食べられるのだが、〈カジキカツ〉を提供している店はあまり見かけないので、大洗を訪れる機会があるのならば、マリンタワーのガルパン喫茶で、このレアな食材のカツを味わってみるのもオツであろう。

 

〈訪問データ〉

 ガルパン喫茶 Panzer Vor:茨城県大洗町、最寄り大洗駅(徒歩十二分)

 二〇二四年三月二十二日金曜十一時半

 カジキカツカレー:一三二〇円(クレカ)

 

〈参考資料〉

〈WEB〉

 「ガルパン喫茶 Panzer Vor」、『大洗マリンタワー』、二〇二四年五月三日閲覧。

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