第四章の一 ひなたの湯(新大阪)
第01浴 天と地と:ひなたの湯・その一(新大阪)
さる五月の週末、急遽、大阪に日帰りで出張る事になった書き手は、直前に取った飛行機が早朝便のせいで、前夜、慌ただしい出発準備に追われ、その結果、出発前夜は入浴できぬまま、始発列車に乗って、空港に向かう事になってしまった。
あの日はたしか五月の半ばだというのに既に蒸し暑く、「伊丹空港」から「新大阪駅」に到着した時には既に、書き手の全身はかなり汗ばんでしまっていた。
しかし、午後に他人に会うというのに、このような汗だくの状態は如何なるものか、と思った書き手は、何処か汗を流せる所はないか、と、空港からのバスの車内で検索をかけてみた結果、なんと、新大阪駅から、高架に沿って徒歩で約二十分程の所に、午前中から営業している〈温泉〉を発見したのであった。
その営業開始時刻は土曜日を除き六時(土曜日のみ八時)からなので、午後からの用事の前に入浴できるのは実に有り難い。
しかも、入浴料金は土日祝日が九八〇円(平日が八五〇円)と千円かからない。ただし、タオルに関しては持参でない場合には別途料金がかかるので、手ぶらの場合には課金しなければならないが、ボディソープ・シャンプー・リンスに関しては備え付けられている。
そういった次第で、五月半ばの土曜日の午前中に書き手が訪れたのが、新大阪に在る「天然温泉 ひなたの湯」なのである。
ちなみに、五月のこの訪店の折には、完全に汗を流すだけの目的で、いわゆる〈サ活〉を自分がするという発想はなかった。そのため、初回は、サウナにも水風呂にも入ってはいない。
さて、建物の最上階である九階に位置しているこの施設は、「ひなたの湯」という、その屋号が言い表わしているように、ウリは露天風呂である。
屋内は、一種類の通常タイプの、遠赤外線の「サウナ」に加えて、「冷やし風呂」と、「なごみの湯」という名の、温度四一度前後の天然温泉という三タイプのみで、屋内スペースはあまり広くはない印象であった。
これに対して、屋外スペースは広々とし、風呂も、「なごみの湯」の屋外ヴァージョンの「満天の湯」という天然温泉、「ジェット浴」と「四季の湯」、そして「天の湯壺」という甕が二つといったように、実にヴァラエティ豊かなのだ。
さらに言うと、屋上の露天空間の縁には、寝転がるタイプの長椅子が複数台用意されてさえいるのだ。
ここで書き手が興味を惹かれたのは、ロング椅子と湯壺である。
長椅子が置かれているエリアは「うたた寝」と名付けられ、ここでは、寝転がって、自然、空を見上げる形になる、すると、青い空と白い雲が視界に入って来て、時折、かなり低空を飛んでいる飛行機が見える場合もある。
また、照り付ける太陽が、生まれたままの姿の肉体を照らしつけ、こう言ってよければ、開放感がハンパないのだ。
書き手が初めて訪れた日は、五月なのに既にかなり暑い日だったので、外を少し歩いただけで、かなり体には厳しかったのだが、外気浴には程よい気温であった。
既に述べたように、この施設は九階に位置しているのだが、周囲にこの建物よりも高い施設は存在しない。だから、屋根の部分が開いていても、他者に覗かれる心配はなく、それ故に実現するのが、まさに、この開放感なのだろう。
つまり、ここで、何も隠す事なく、太陽に全身を晒し、身体中を脱力させられるのは、得も言われぬ快感だったのだ。
さらに、である。
屋上の縁からは、窓越しに〈下界〉が見下ろせるのだ。
建物は、新大阪駅に続く高架近くに在るのだが、ひなたの湯からは、その高架が見下ろせるようになっている。
まさに、天も地も我が物にしたような感覚は、実に気分爽快で、これはハマるかも、と感じた書き手であった。
〈訪問日時〉
初回:二〇二四年五月十八日(土)十時〜十二時
入浴料(九八〇)、カレーうどん(七〇〇):一六八〇円
〈参考資料〉
「営業時間・料金案内」「施設案内」、『天然温泉 ひなたの湯』、二〇二四年八月二十四日閲覧。
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