EX03 スパカレーという着想

 可能な限り交通費を浮かせる為に、深夜運行の高速バスを使う場合は言わずもがな、「青春18きっぷ」で普通列車を利用する場合や、セールやディスカウント・マイルで安く取った飛行機に乗る場合は、始発や早朝便を使う事になる。そのため、準備や睡眠時間確保の都合上、お風呂に入ったり、シャワーを浴びる暇が無いのは、〈格安移動あるある〉なのだ。


 たしかに、これは、深夜移動や早起き故に致し方ない状況かもしれないが、それでも、もし出来る事なら、目的の催しや、目当てのカレー提供店に行く前に、やっぱりさっぱりしたいのだ。


 こういった場合の解決策として、シャワー無料のネットカフェに入って、シャワーだけ浴びて即時退店する、という方法があり得る。

 だが、ネットカフェは、滞在時間で料金が変わってゆくので、シャワーだけの入店の場合、時間との戦いになる。さらに、ネカフェのシャワーの場合、個室の数が限られているし、タイミングが悪いと順番待ちになり、予想以上に時間が溶けてしまう事になりかねない。そして、深夜バスで移動する人間が考える事は、みな同じなので、土日の高速バスの降車場近くや繁華街のネカフェの場合、シャワーの順番待ちは頻繁に起こり得るのだ。


 それならば、多くの人数の受け入れが可能で、順番待ちの必要のない銭湯に行けば、という発想になるが、午前中から営業している店は実に稀で、多くの場合、三時ないしは四時、早くても二時から開店という所が殆どで、これだと主目的と被ってしまうので、これまた本末転倒となろう。


 つまり、肝心な点は、目的地に到着し、主目的のイヴェントの開催やカレー店の開店前の午前中にさっぱりできて、時間や順番待ちの煩わしさを覚えずに済む事なのだ。


 この目的に叶うのが、いわゆる〈スパ〉であろう。

 だがしかし、都内のスパの場合、二千円ないし三千円かかる所が多く、ちょっとこざっぱりしたいだけなのに、この金額を出す事には流石に躊躇いを覚えてしまう。

 そもそもの話、これだけの値段を入浴やシャワー〈だけ〉に使うのならば、安い交通手段を使う意味がそもそもなくなってしまい、これまた本末転倒な話だ。


 だが、色々と調べてみた結果分かったのは、午前中から営業している千円前後のスパが実は結構あって、その中には、館内に食堂やレストランが併設され、さらに入浴の後の食事が〈スパメシ〉と呼ばれ、一つのグルメ・ジャンル化してさえいる事であった。

 

 ここで書き手は、これまた発想してしまったのだ。


 どうせ、深夜や早朝に移動して、〈スパる〉のならば、スパ内のレストランでカレーを食べ、〈スパ&カレー〉という企画を実行するのも面白いのではなかろうか、と。

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