デスゲーム万歳

ガミエ

第1話

 右を選ぶべきか。それとも左か。


 俺はいわゆるデスゲームに参加させられている。今まで一緒に戦い生き残ってきた少女と最後の生き残りをかけてババ抜きをさせられている。最終局面。俺がジョーカーを引けば勝負は続き、手札と同じキングを引けば勝負は終わる。机を挟んで反対側の彼女は涙が止まらない。顔はぐちゃぐちゃだった。これまでのゲームでストレスが限界なんだ。何とかしてやりたい。ピエロのお面をかぶったゲームマスターはイカサマ防止のため、お面の下の口角が上がっているのが見えるほど近くにいた。この状況を楽しんでいるようで気に食わない。


 どっちが残っても恨みっこなしだよ、最終ゲームが始まる前に彼女はそう言ってくれたが、正直俺は生き残りたい。もっと言うと二人で生き残って外の世界で楽しく過ごしたい。


「早くさんからカードを選んでください。さん」


 ゲーム用につけられた名前を呼ぶピエロに苛立ちが止まらない。こいつにさんざん好き勝手されてきた。ゲームの説明に異を唱えたは銃で殺された。椅子取りゲームで負けたさんはスタンガンで殺された。


 なんでこいつに従わなきゃいけないのか。最後に一発くらわしてやりたい。こんだけ近くにいるんだ。できるはず。


「どうしました、さん?」


 ゲームマスターが手札をのぞき込もうとする。顎が見える。口角が上がっている。無防備な仮面の下に狙いをすませ拳を振りぬいた。仮面が落ち、男がよろめく。腰元のホルスターから拳銃を奪い胸を打ち抜く。鮮血が噴き出し男は倒れた。胸ポケットからキーリングを奪った。


 さらに顔をぐちゃぐちゃになった少女の手を取った。


「逃げよう!俺らの勝ちだ!」


 俺は少女の手を強く握り走り出した。


「うまく外に出れたら、本当の名前をおしえてくれよ」


「もちろん!そっちこそ」


 少女は強くうなずいた。

 

 ***


 この様子が写されているディスプレイを十人のおびえた男たちと、黒いローブを身に着け仮面を被った二人が見ていた。


 仮面の一人が男たちに言った。


「おい予習はここまでだ。一番手は残念だったな。次のやつ、約束通りデスゲームをつつがなく運営できれば解放してやるよ。立候補はいないか?」


 だれも手を挙げずうつむくだけだった。


「準備が終わったらまた来る。それまでに決めとけよ」

 

 仮面の二人は扉に手をかけたところで振り返り男たちに言った。


「誰も俺らを殺そうなんて思うなよ。さっきのピエロとは違ってこっちはプロだからな」


 二人の仮面は部屋をでた。一人が仮面を外して言う。


「やっぱり、デスゲームの運営を初心者に任せるの楽しいですね。予想外の展開しか起きないですよ。最後殺されちゃうんだもん。それにしてもババ抜きって。運だけのゲームにするとかさすがビギナーっすよね。ゲーム性ゼロじゃん」


「そう言ってやるなよ」


「ワハハハハハ」


「アハハハハハ」


 廊下を歩く二人はゲームを振り返り大声で笑った。

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